AD TECH · ANALYSIS
Gorgieがカーゴの「Karlo」を試験導入…6つのAIエージェントが企画・ターゲティング・素材を担い、月3万ドル規模の広告主を狙う

SNSとリアルイベントを軸に成長してきた米エナジードリンクブランドのGorgie(ゴージー)が、広告をリビングのテレビ画面に広げる方法を試している。アドテク企業カーゴ(Kargo)のセルフサービス型プラットフォーム「Karlo(カーロ)」を使い、既存の動画素材と少人数のマーケティングチームでコネクテッドTV(CTV)キャンペーンを回せるかを検証している。成果はまだ公表されていない。
Karloは6つのAIエージェントで動く。米広告専門誌Ad Ageの10月27日の報道によると、エージェントがキャンペーン企画、オーディエンス選定、広告枠の選定、素材の変換、成果分析を分担し、広告主は普段の言葉で指示を出す。カーゴは料金体系をまだ決めていない。最初のターゲットは月におよそ3万ドル(約460万円)を使うマーケターだ。
eMarketerの2025年12月の予測の要約によると、米国のCTV広告費は2026年に379億5,000万ドルに達し、2028年には従来型テレビを上回る見通しだ。ただテレビ広告の買い付けには、いまも大きな予算と、メディアの買い方を知る人材、フォーマットごとに作り分けた素材が要る。中小の広告主が、少人数でも手軽に出稿できるGoogleやMetaに予算の大半を置いてきたのはそのためだ。
Gorgieの創業者でCEOのミシェル・コルデイロ・グラント氏はAd Ageに対し、以前はテレビに近づくだけでも数百万〜数千万ドル規模の予算が必要だったが、Karloでは本当に狙いたいオーディエンスや掲載先を試せると語った。Gorgieはまだキャンペーンの成果を示していない。カーゴのハリー・カーグマンCEOも、効果の帰属分析と成果の証明にはまだ課題があると認めた。
企画から素材まで6つのエージェント…デモでは予算の70%をCTVに
Ad Age向けのデモで、KarloはGorgieの既存素材を使って秋の認知拡大キャンペーンを組んだ。予算の70%をCTV、30%をオンライン動画に配分するよう提案し、ノンアルコール飲料に関心のある消費者のカスタムオーディエンスを生成した。

グラント氏にとって変化は素材にある。Karloは掲載先ごとに素材のサイズを変え、見出しや画像、色も頼むだけで変えられる。以前は見出しの色を一つ変えるだけでも全フォーマットの素材を作り直す必要があり、小さなテストに踏み切りにくかったという。グラント氏は「そうした考え方はなくなった」と述べ、いまは変更を試し、うまくいかなければ元に戻せると話した。KarloはMetaやCanvaから素材を取り込むこともできる。
カーグマン氏はサービス開始の発表で「いま登場しているエージェント型ツールの多くは入札とターゲティングを中心に作られている」と述べた。Karloはキャンペーンの実行中、入札やターゲティングと同じループの中で素材を評価・調整する。カーゴは、これによってアカウントを張り付きで監視する専任アナリストが要らなくなるとしている。
2003年にニューヨークで設立されたカーゴは、ハーシーなどの大手広告主にクリエイティブフォーマットやプレミアム枠を販売するマネージドサービス事業を営み、年間800〜1,000社の大口顧客を抱える。3月31日には大口バイヤー向けのエージェント型買い付けプラットフォーム「Project KERA」を、ハーシー、旅行メディアネットワークのナビゲーター、独立系代理店のWpromoteと非公開ベータで始めた。Karloは同じ技術を少人数のチーム向けにまとめたもので、カーゴはセルフサービスの顧客数を数万社規模に増やしたい考えだ。
女子学生寮にドローン配送…SNS動画をキャンパス向けCTV広告に
Gorgieは2022年に設立され、2023年1月に最初の缶を出荷した。グラント氏は以前、下着ブランドLIVELYを創業し、リテール・ダイブによると同社は2019年にワコールに1億500万ドルで売却された。Gorgieは2025年に2,450万ドルのシリーズAを調達した。
同社によると、7月の小売売上高は前年同月比600%増え、年末までに全米1万5,000店以上に並ぶ見込みだ。インフルエンサーのアリックス・アール氏やミュージシャンのジョン・ボン・ジョヴィ氏も出資している。マーケティング予算は半分がイベント、半分がデジタル広告で、具体的な金額は明らかにしていない。
Gorgieは6月から女子学生寮にドローンで商品を届け、その映像をSNSコンテンツにしてきた。グラント氏は、ドローン配送とSNSでの拡散、近隣のターゲットやウォルマートへの来店の間に相関が見られたと話す。今後はこうした動画をKarloでCTVに移し、大学周辺の地域にジオターゲティングしたキャンペーンを展開する計画だ。

ウォルマートがVibeを買収…小売大手もセルフサービス型CTV競争に参入
ウォルマートは6月23日にVibe.coの買収で合意し、8月4日に完了した。Vibeは中小の広告主向けのセルフサービス型CTVプラットフォームで、顧客は1万社を超える。ウォルマートは条件を公表していないが、ウォール・ストリート・ジャーナルは買収額を約14億ドルと報じた(業界メディアの引用による)。ウォルマートは2024年にスマートテレビメーカーのVIZIOも買収しており、買い物客のデータ、テレビの広告枠、セルフサービス型の買い付けツールを一つの傘の下にそろえた。
PPC Landによると、Amazon DSPのマネージドサービスは通常5万ドルの最低出稿額が必要になる。一方、カーゴが狙う月3万ドルはあくまで想定顧客像であり、確定した最低額ではないため、両者は単純に比較できない。米インタラクティブ広告協議会(IAB)は9月の改訂で、2026年の米CTV広告費の伸び率を1月時点の13.8%から15.6%に引き上げた。ソーシャルメディアは16.5%の伸びを見込む。

公表された成果はAd Councilのキャンペーン1件…購買データの連携は途上
カーゴがKarloについて公表した成果は、Ad Councilのメンタルヘルス啓発キャンペーン「Love, Your Mind」のものだけだ。カーゴによると、広告想起が21%、助成認知が10%上昇した。PPC Landは10月7日、サンプル数や掲載期間、予算、調査設計が公表されていないと指摘した。
カーグマン氏はBrand Innovatorsに対し、Karloは現時点ではパフォーマンスマーケティングよりも認知拡大に強く、AmazonやWalmart Connectとのデータ連携はまだ進行中だと語った(引用元)。グラント氏はGorgieにとっての当面の効果を時間に見ている。チームがメディア運用に費やさなくて済む時間を、イベントや素材の実験、顧客と直接会うことに回せるからだ。
韓国の放送広告市場は2兆7,700億ウォンに縮小…中小企業のテレビ支援は制作費が中心
放送メディア通信委員会(방송미디어통신위원회)と韓国放送広告振興公社(KOBACO)が1月8日に公表した「2025年放送通信広告費調査」は、2025年の放送広告費を前年比13.8%減の2兆7,700億ウォン(約3,200億円)と予測した。2022年の4兆200億ウォン(約4,600億円)より約1兆2,000億ウォン少ない。広告費全体に占めるオンラインの比率は62.1%だった。

アドテク企業のモティブインテリジェンス(모티브인텔리전스)によると、同社のCTVプラットフォーム「クロスターゲットTV」(크로스타겟TV)の出稿額は2024年に76.8%、2025年に17.9%増えた(同社資料)。規制当局が韓国の広告主153社を対象に行った調査では、ストリーミングサービスに広告を出す理由として「ターゲティングの精度」(53.4%)が最も多かった一方、出稿後の評価では「費用対効果」(63.4点)が最も低い項目の一つだった。
今年の中小企業放送広告支援事業では、1次で中小企業23社と小規模事業者114社、6月の2次で応募37社のうち2社の計139社が選ばれた。選ばれた企業はテレビ広告制作費の最大半額、上限4,500万ウォン(約520万円)の支援を受ける。韓国の地上波と総合編成チャンネルの広告は、「放送広告販売代行等に関する法律」に基づきメディアレップを通じて販売されている。
フォーマット変換と少額予算…韓国の放送局のデジタル営業が試される
Gorgieの事例で効果が表れるのは、媒体費よりも、グラント氏が挙げた人員と素材の変換という2つの面だ。韓国の中小企業支援が制作費の補助に重点を置くのも同じ理由で、テレビ向けの素材を作るのは費用がかかる。KOBACOの上限4,500万ウォンは、Karloが想定する月額の出稿規模に近い。
カーゴは800〜1,000社の大口顧客から数万社のセルフサービス顧客への拡大を目指す。韓国の放送広告支援事業が今年対象とするのは139社だ。韓国の放送局がFASTチャンネルやストリーミングサービスの広告枠を中小の広告主に開放しようとするなら、Gorgieの試験は、SNSの縦型動画のテレビ向け変換、少額単位での買い付け、一つの画面でのレポーティングという3つの条件がセットで必要になることを示している。費用対効果の評価の低さは効果測定を強化する必要性を示すものであり、それだけで少額テスト需要の存在を裏付けるわけではない。
ソーシャル対応は年内…Gorgieの秋キャンペーンが最初の試金石
シェリー・パーマー氏によると、KarloはCTVとオープンウェブの動画で始まり、ソーシャルは2026年後半、ディスプレーはその後に対応する予定だ。カーゴはCTV、ソーシャル、オープンウェブを一つのオーディエンス設定に基づく一連の流れとして売り込んでいる。AmazonとWalmart Connectとの連携が完了すれば、Karloの市場は認知目的の広告主から、売上で効果を測る広告主へと広がる可能性がある。
eMarketerの過去の予測では、米国のCTV広告費は2028年に468億9,000万ドルに達し、従来型テレビの451億ドルを上回る。ウォルマートのVibe買収とカーゴのKarloは、いずれもその成長のうち中小規模の部分を狙っている。Gorgieが成果を公表すれば、秋のキャンペーンは中堅ブランドの有用な事例になりうる。測定方法が併せて開示されるかどうかが、ほかの広告主の評価を左右しそうだ。
韓国では放送広告費が減る一方でCTVへの出稿は増えている。放送局とメディアレップが、制作費の補助だけでなく、素材の変換や少額予算での買い付けツールを中小の広告主に提供できるかどうかが、そのデジタル予算をどれだけ取り込めるかを左右しそうだ。
今後変わりうること
買い付けと素材の変換が容易になれば、より多くの中堅ブランドがテレビの広告枠を試せるようになる可能性がある。その機会の大きさは、実際の最低予算、手数料、広告枠へのアクセス、継続出稿によって決まる。これは業界の見立てであり、定量的な市場予測ではない。
小売データによってブランド露出と購買の測定は近づくかもしれないが、広告と売上の間に見られる関連は因果関係を証明するものではない。プライバシー保護、データへのアクセス、信頼できる対照群が、広告主が成果に認める価値を左右する。
媒体社や代理店にとって、セルフサービス化は収益配分、重複リーチ、ブランドセーフティー、測定基準をめぐる課題を突きつける。韓国のCTVプラットフォームのデータを、市場全体の成長を示す指標とみなすべきではない。