韓国の俳優チェ・ブラム(최불암、本名チェ・ヨンハン)氏が29日、死去した。87歳だった。
ソウル市江西区の病院で入院治療を受けていたところ、同日午後10時30分ごろ息を引き取った。41年間にわたり関わってきた児童福祉団体チャイルドファンド・コリア(초록우산)が30日、死去と葬儀日程を明らかにした。2025年に椎間板ヘルニアの手術を受けた後、入院してリハビリを続けていた。
政府は30日、チェ氏に金冠文化勲章(1等級)を追叙した。チェ・フィヨン(최휘영)文化体育観光部長官が同日午後、ソウル峨山病院の弔問所を訪れ、遺族に勲章を手渡した。文化体育観光部は、67年間にわたり演劇、ドラマ、映画、教養番組で「変わらず国民のそばにいた俳優」と評価し、『捜査班長』と『田園日記』で韓国テレビドラマの成長期をけん引したことを追叙の理由に挙げたと、聯合ニュースが30日伝えた。これまでに金冠文化勲章を受けた俳優には、2016年のペク・ソンヒ、2021年のユン・ヨジョン、2022年のイ・ジョンジェ、2025年のイ・スンジェとキム・ジミ、2026年のアン・ソンギらがいる。
チェ氏はMBCの刑事ドラマ『捜査班長』(수사반장)で18年間パク・ヨンハン班長を、農村家族ドラマ『田園日記』(전원일기)で22年間ヤンチョン里のキム会長を演じた。二つの作品で同じ役を合わせて40年続けたことになる。『田園日記』は韓国で最も長く放送されたテレビドラマとして記録されている。
ドラマ終了後は、2011年から2025年3月までKBS 1TV『韓国人の食卓』(한국인의 밥상)の進行役として全国を回り、郷土料理とそれを作る人々の暮らしを伝えた。1959年に初めて舞台に立ってから67年、演劇・映画・ドラマ・教養番組で活動した。

1959年『ハムレット』で初舞台 1967年にKBS特別採用6期でテレビへ
1940年6月15日、仁川生まれ。8歳で父を亡くした。ソウルの中央高校の演劇部で舞台に出会い、ソラボル芸術大学(現・中央大学)と漢陽大学演劇映画科で学んだ。1959年、劇団実験劇会の『ハムレット』でデビューし、1965年に国立劇団の団員となった。
1967年にソウル中央放送(現KBS)の特別採用6期タレントに選ばれ、時代劇『首陽大君』のキム・ジョンソ役でテレビに出演した。1969年のMBC開局とともに移籍した。母のイ・ミョンスク氏が営んだ酒場「銀星(ウンソン)」は、貧しい芸術家たちのたまり場として知られる。
『捜査班長』880回 2024年の前日譚『捜査班長1958』に老年の班長役で
1971年3月に始まった『捜査班長』は1989年10月まで880回放送され、最高視聴率は70%に達した。チェ氏のパク班長は、毎回事件を解決しながらも苦い表情を隠さない刑事だった。番組のテーマ曲は、ポン・ジュノ監督の映画『殺人の追憶』(2003年)でソン・ガンホ演じる刑事が口ずさむ場面にも使われた。

パク班長を中心に、キム・サンスン、ナム・ソンフン、チョ・ギョンファン、ノ・ギョンジュらが演じるソウル市警捜査課の刑事たちが、実際の事件を解決していく構成だった。捜査手法よりも犯人や被害者の事情を描く人間ドラマに重きを置いた。

警察のイメージ向上に貢献したとして1972年に名誉警察官に委嘱され、2024年には民間人として初めて名誉国家捜査本部長(治安正監)に任命された。同年4月にMBCが放送した前日譚『捜査班長1958』では、イ・ジェフン(이제훈)が若き日のパク・ヨンハンを演じ、チェ氏は第1話と最終話に老年のパク班長として出演した。1971年に始まった作品が53年後に新シリーズとして続いたことになる。

『田園日記』22年のキム会長 「国民の父」の呼び名が定着
1980年から2002年まで放送された『田園日記』で、チェ氏はキム・ヘジャ(김혜자)と夫婦役を演じ、厳しくも優しい家長像を見せた。「国民の父」という呼び名はこの作品で定着した。一時は彼を主人公にした「チェ・ブラム・シリーズ」と呼ばれる笑い話が本になるほど流行した。

児童支援との縁も『田園日記』の撮影現場から始まった。1981年、子役との出会いをきっかけに『田園日記』『普通の人々』の出演者とともに子どもへの支援を始めた。2023年9月には『田園日記』の出演者が再会したtvN STORY『会長宅の人々』に出演し、1970年に結婚した妻で俳優のキム・ミンジャ(김민자)氏について「今も思うと胸がときめく」と語った。

『韓国人の食卓』14年、700回超 2025年にチェ・スジョンへ引き継ぎ
1999年から2008年までKBS『よい国運動本部』の進行役を務め、2011年に『韓国人の食卓』を引き受けた。放送10年を迎えた2021年1月の聯合ニュースのインタビューでは「ご飯は命」と述べ、行っていない地域はないが北朝鮮の料理を紹介できなかったのが心残りだと語っている。

2025年3月、進行役を俳優チェ・スジョン(최수종)氏に引き継いだ。チェ・スジョン氏は700回記念の記者懇談会で「先生の影を踏まないよう気をつけながら、その足跡をたどっていく」と述べたとノーカットニュースが伝えた。
1985年からチャイルドファンド・コリア全国後援会長を41年
チェ氏は1985年にチャイルドファンド・コリアの全国後援会長に就任し、41年間、国内外の子どもの支援に携わった。2015年の就任30周年記念式では、奉仕を「一緒に雨に濡れること」にたとえ、「人に最も必要なのは、人だ」と語った。同年、75歳でケニアのトゥルカナ地方を訪れ、子どもたちのための貯水タンク設置に参加した。
政界にも一度身を置いた。1992年の第14代総選挙で統一国民党の比例代表として国会議員となり、1996年の第15代総選挙ではソウル永登浦乙から立候補して落選した。1979年の大鐘賞主演男優賞(『走れマンソク』)、1980年の第1回韓国映画評論家協会賞主演男優賞(『最後の証人』)を受賞し、2014年11月の大韓民国大衆文化芸術賞で銀冠文化勲章を受けた。
葬儀は5日葬で、「チャイルドファンド・コリア財団葬」として営まれる。葬儀委員長は黄永基(ファン・ヨンギ)同団体会長が務め、李寿成(イ・スソン)、李洛淵(イ・ナギョン)両元首相らが葬儀委員に名を連ねる。弔問所はソウル峨山病院葬儀場20号室に設けられ、遺族の希望で報道陣には公開されていない。ソウル中区武橋洞の同団体本部ビル1階にも追悼スペースが設けられる。
入棺は11月1日午後2時30分、出棺は2日午前7時。敬虔なカトリック信者だったチェ氏は、出棺後にソウルの汝矣島聖堂で葬儀ミサが行われる。生前の「死んだら財団に必ず立ち寄ってほしい」という言葉に従い、武橋洞の本部を経て、京畿道坡州市の東和敬慕公園に埋葬される。遺族は妻キム・ミンジャ氏、長男トンニョク氏、長女トンビ氏。
金冠文化勲章を追叙 病床で「退院したらマッコリ」と約束した長官が伝達
MBCは2026年5月5日と12日、特集ドキュメンタリー『パハ、チェ・ブラムです』を放送した。「パハ」は彼の笑い声の愛称だ。リハビリ中だったチェ氏は第1部に出演できなかったが、先に公開された予告映像では、やせた姿で後輩俳優チェ・シラに「父親として、この言葉を伝えたかった」と語りかけた。放送を前に「長い間私を愛してくださった視聴者の皆さんに感謝を伝えたい。それが道化の心だ」とのコメントを寄せた。

6月11日に病室を訪れたチェ・フィヨン(최휘영)文化体育観光部長官には「退院したら一杯やろう」と話し、長官はマッコリをねだったという。長官は訃報に接し、その約束を振り返り、弔問所で自ら勲章を手渡したとソウル新聞が30日伝えた。李在明(イ・ジェミョン)大統領は深い哀悼の意を示し、社会の陰に目を向けてきた故人の思いを心に刻むと述べた。呉世勲(オ・セフン)ソウル市長は「長い年月、ソウルの顔だった」と振り返った。ポペラ歌手のイム・ヒョンジュ氏はSNSで、多くの国民の温かい父となってくれたことに感謝をつづった。
11月2日に出棺 前日譚・復元版で受け継がれる67年の記録
チェ氏の作品の一部は、すでに新しい形で視聴者に届いている。『捜査班長』は2024年に前日譚として再制作され、『田園日記』の出演者はバラエティー番組で再会した。1980年に検閲で30分以上カットされて公開された映画『最後の証人』は、韓国映像資料院が2003年に154分の復元版を公開し、2017年にブルーレイ化した。6月の見舞いで同院の院長がチェ氏に手渡したのも、このブルーレイだった。
韓国ドラマがストリーミングサービスで世界に広がる前、同じ俳優が同じ役を数十年演じ続ける長寿ドラマが韓国の家庭の日常を支えた時代があった。パク班長とキム会長はその時代を代表する人物であり、前日譚や再会番組、復元版を通じて次の世代の視聴者に受け継がれている。一般の人々との最後の別れは、11月2日の汝矣島聖堂での葬儀ミサとなる。
参考資料
- 聯合ニュース(韓国語)、チェ・ブラム氏に金冠文化勲章追叙(2026年10月30日)
- SBS News, Veteran Actor Choi Bool-am Dies at 87(2026年10月30日)
- 韓国日報(韓国語)、チェ・ブラム氏死去(2026年10月30日)
- ファイナンシャルニュース(韓国語)、財団葬(2026年10月30日)
- ニュースエン(韓国語)、葬儀日程(2026年10月30日)
- ソウル新聞(韓国語)、追悼特集(2026年10月30日)
- ウィキメディア・コモンズ、Korea 59th Memorial Day 12(CC BY-SA 2.0)
- ウィキメディア・コモンズ、Choi Bool-am from acrofan(CC BY-SA 3.0)
死去時刻はチャイルドファンド・コリアの発表(午後10時30分)に従った。一部メディアは午後10時ごろと報じている。年齢は韓国の報道に合わせて87歳とした(満86歳)。かぎかっこ内は報道された発言で、韓国語の発言は本紙訳。Korea.netとアクロファンの写真はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの条件に従って掲載し、その他は放送局(MBC・KBS)提供の広報画像である。