CJ ENM、ハドソンAIの吹き替えでKダンスの北米 FAST展開を拡大

CJ ENM、ハドソンAIの吹き替えでKダンスの北米FAST展開を拡大 LGチャンネルで200時間超を編成 視聴時間と広告収入の拡大が次の焦点

CJ ENM、ハドソンAIの吹き替えでKダンスの北米 FAST展開を拡大

FAST・ストリーミング流通

CJ ENMのK-ダンス、一つのフランチャイズで埋めた北米FASTチャンネル

LGチャンネルで米国・カナダ独占「CJ ENM K-Dance」開設… 『スウパ』『スメンパ』『Somebody』200時間を24時間編成、英語・スペイン語AI吹き替えはハドソンAIコンソーシアム

CJ ENM K-Danceは米国・カナダのLGチャンネルで24時間無料で放送される。イラスト=K-EnterTech Hub

要約  CJ ENMは10月27日、LGチャンネルにKダンス専門のFASTチャンネル「CJ ENM K-Dance」を米国・カナダ独占で開設した。『ストリート・ウーマン・ファイター』を中心に200時間超を24時間編成し、英語・スペイン語AI吹き替えは韓国政府K-FAST支援事業のハドソンAIコンソーシアムが担当した。CJ ENMの北米FASTチャンネルは6つになった。

韓国のCJ ENMは10月27日、LG電子の広告型無料ストリーミングTV(FAST)サービス「LGチャンネル(LG Channels)」に、Kダンス専門チャンネル「CJ ENM K-Dance」を米国・カナダ独占で開設した。CJ ENMがLGチャンネルに独自チャンネルを開くのは初めてで、北米のFASTチャンネルは6つになった。

チャンネルはMnet(엠넷)のダンスバトル番組『ストリート・ウーマン・ファイター(스트릿 우먼 파이터)』のフランチャイズを中心に、200時間超を24時間編成する。ドラマやK-POPといったジャンル単位ではなく、一つのフランチャイズとその派生シーズン、デジタルクリップでチャンネルを埋めたのは、CJ ENMの北米FASTで初めてだ。米国LGチャンネルの番組表ではIP-855に表示される。

ダンスを選んだ理由は言語の壁だ。CJ ENMでFAST・AVOD事業を率いる朴恩恵(パク・ウンヘ、박은혜)コンテンツ流通新事業推進チーム長は、米業界誌StreamTV Insiderが30日に掲載した書面インタビューで、ダンスは言語や文化の壁を越えて楽しめ、ストーリーを知らなくても見られるため、編成表どおりに流れるFASTに合うと説明した。海外クルーが出場したシーズンが北米で好調だったことも根拠に挙げた。

英語・スペイン語の吹き替え版は政府の支援事業で制作した。韓国科学技術情報通信部と韓国情報通信振興協会(KAIT)は7月、「AI吹き替え特化K-FAST拡散支援」事業の2年目の事業者にハドソンAI(Hudson AI、허드슨에이아이)のコンソーシアムを選び、そのチャンネル名が「CJ ENM K-DANCE」だった。支援額は1チャンネル当たり2億3000万ウォン(約17万2000ドル)。ハドソンAIはメキシコと米国ヒスパニック層向けのスペイン語版を制作している。

CJ ENMは今回のチャンネルで、北米FASTの編成をドラマ・映画、K-POP、リアリティー、グルメ・旅行、スペイン語吹き替えドラマからダンスまで広げた。朴氏は、来年はチャンネル数を増やすより、すでに開いたチャンネルの視聴時間と広告収入を伸ばすと述べた。

『スウパ』『スメンパ』『Somebody』… 200時間超のダンス番組を24時間編成

K-ダンスはMnet(엠넷)のダンスバトル番組『ストリート・ウーマン・ファイター』『ストリート・マン・ファイター』、ダンス恋愛リアリティー『Somebody(썸바디)』、「MPD直カム(FanCam)」、「MAMA AWARDS」の主要ステージで構成する。StreamTV Insiderによると編成量は200時間を超える。番組の合間にはデジタル音楽スタジオM2の「STUDIO CHOOM」のパフォーマンス映像や、シリーズ公式YouTubeチャンネルの動画を定期的に挿入し、新シーズンや新しいダンスIPが出るたびにメインラインナップを入れ替える。

シリーズを手がけたCJ ENMの崔正男(チェ・ジョンナム)PDはプレスリリースで、「企画当初から、韓国ダンス文化の美しさと『ダンスは言葉より深いものを表現できる』というメッセージを世界の視聴者と分かち合いたかった」と述べ、「今回のローンチはK-ダンスの世界観をさらに広げる新たな動機になった」と語った。振付師のペク・グヨンとバダは「番組の中の激しくも温かい瞬間を楽しんでほしい」とコメントした。

朴氏がダンスを選んだ理由は言語だ。「ダンスは言語や文化の壁を越えて直感的に楽しめるジャンルだ」としたうえで、「ストーリーを最初から追っていなくても視覚的に引き込まれるため、編成表どおりに流れるFASTに合う」と述べた。海外クルーが出場したシーズンが北米で好調な視聴成績を上げたことも根拠に挙げた。2025年5~7月に放送された『ワールド・オブ・ストリート・ウーマン・ファイター』には6チームが出場し、日本のOsaka Ojo Gangが優勝した。

LGチャンネルでの独占は当面続く。ただ朴氏は「韓国エンターテインメントには米国で新たな視聴者に届く余地がまだ大きい」とし、独占よりもどれだけ広く発見・視聴されるかを優先すると述べた。K-ダンスが他のプラットフォームに広がる可能性もある。LGチャンネルは7月時点で37カ国・5000以上のチャンネルを運営し、2025年の月間平均視聴者数は前年比30%、総視聴時間は45%増えた。

LGチャンネルの2025年の月間平均視聴者数と総視聴時間の伸び率。資料=LG電子

ドラマからダンスまで6チャンネル… 北米ではスリラーと恋愛リアリティーが反応

CJ ENMの北米FASTチャンネルは、K-Stories、K-Pop、K-Reality、K-Food & Travel、スペイン語吹き替えドラマのK-Novelas、K-Danceの6つ。The Roku Channel、Google TV、Samsung TV Plusにチャンネルを供給し、8月にはAmazonのPrime VideoにK-StoriesとK-Popを追加した。Samsung TV PlusはK-Danceを除く5チャンネルを米国を含む17カ国で配信する。AVODではSamsung TV Plus、The Roku Channel、FoxのTubi、Prime VideoにAI補助の英語字幕付きで作品を提供している。

チャンネル

ジャンル・編成

主なプラットフォーム

K-Stories

ドラマ・映画(『THE K2』『九尾狐伝』『ベテラン』『EXIT』など)

Prime Video(8月)、Samsung TV Plus

K-Pop

MV・ステージ映像60時間以上、MPD直カム

Prime Video(8月)、Samsung TV Plus

K-Reality

バラエティー・恋愛リアリティー

Samsung TV Plusなど

K-Food & Travel

グルメ・旅行バラエティー

Samsung TV Plusなど

K-Novelas

スペイン語吹き替えドラマ

Samsung TV Plusなど

K-Dance

スウパ・スメンパ・Somebody・MAMAステージ、200時間以上

LGチャンネル(米国・カナダ独占、10月27日)

CJ ENMの北米FASTチャンネル構成。資料=StreamTV Insider、CJ ENM

チャンネルごとに形式は異なる。K-PopチャンネルはMVやステージ映像を切り出したクリップ中心で60時間超を回しており、米国での視聴時間は前年比200%以上の伸びを続けている。2024年にSamsung TV PlusでMAMA AWARDSを生中継した際、同チャンネルの視聴時間は普段の3倍を超え、イベント後も増えた視聴が続いた。

朴氏は「グローバルな定額制ストリーミングではロマンスドラマが注目されたが、当社のFAST・AVODではスリラーや犯罪ドラマなどのジャンルもの、最近放送されたバラエティー、一般人が出演する恋愛リアリティーが好成績を上げた」と語った。恋愛リアリティー『乗り換え恋愛(EXchange、환승연애)』については「韓国文化に詳しくない視聴者にも物語が届く」と評価した。

ダンスというジャンルの中でも細分化が進んだ。『スウパ』のフランチャイズは『スメンパ』、韓国舞踊・現代舞踊・バレエのダンサー64人が競った『ステージ・ファイター』(2024年)、海外クルーが出場した『ワールド・オブ・スウパ』(2025年)へと枝分かれした。プラットフォーム側もジャンルを広げている。Samsung TV Plusは最近、ショートドラマ、週替わりの映画枠、競演番組を韓国コンテンツのラインナップに加えた。政府のK-FAST事業2年目も新設チャンネルのジャンルを縦型ドラマ、K-ビューティー、K-ダンスとし、ハドソンAIの「CJ ENM K-DANCE」のほか、ESTsoft(이스트소프트)が「GENIE K-Short」「TREND ON」、UnAI(언에이아이)が「K-Vibe+」を担う。

需要面には余地がある。Ampere Analysisは、韓国のオンデマンド作品の約45%が国内のVODサービスでしか提供されていないとし、韓国を需要に輸出が追いついていない市場に挙げた。OmdiaのMaria Rua Aguete氏は、Netflix会員の80%が韓国コンテンツを視聴し、韓国作品がNetflixで1年間に121億時間視聴されたと紹介した。韓国科学技術情報通信部はStatistaの予測を引用し、世界のFAST市場が2025年の約16兆ウォン(約120億ドル)から2030年に約23兆ウォン(約172億ドル)へ拡大するとみている。

吹き替えはハドソンAIコンソーシアム… 1年目は1200本・累計視聴者1億人

K-FAST支援事業は2025年の補正予算80億ウォン(約600万ドル)で始まった。6つのコンソーシアムが韓国コンテンツ約1200本・1400時間を英語・スペイン語・ポルトガル語に吹き替えて20チャンネルを構築し、昨年末からSamsung TV PlusとLGチャンネルを通じて米国・カナダ・メキシコなど22カ国で配信した。科学技術情報通信部は7月9日、4月末時点の累計視聴者が約1億人に達し、アライアンスの参加企業が発足時の22社から82社に増えたと発表した。

グローバルK-FASTアライアンス参加企業・機関数の推移。資料=韓国科学技術情報通信部・KAIT

ハドソンAIは1年目の事業にも参加した。申賢珍(シン・ヒョンジン、신현진)代表は2025年8月の政府懇談会で「CJ ENMとコンソーシアムを組み、3~4カ月でドラマ300時間を吹き替えている」と述べた。同社はこの期間、CJ ENM、LG電子と400時間超の韓国ドラマをローカライズし、北米・欧州のFASTチャンネルに供給した。2年目の今年はCJ ENMとK-ダンスのフラッグシップチャンネルを担う。

朴氏はStreamTV Insiderに対し、この事業を通じてK-ダンス用に『スウパ』の一部シーズンの英語・スペイン語AI吹き替え版と英語字幕版を制作し、実務経験を積んだと語った。「同じIPを言語や視聴の好みに応じて複数の形で届ける選択肢ができた」とし、スペイン語のローカライズを英語とともに「不可欠」と位置づけた。次の言語としては韓国コンテンツへの関心が高いブラジルとフランスを挙げた。CJ ENMはAI翻訳・字幕に専門スタッフの最終チェックを組み合わせ、FAST向けのAI吹き替えを試験しながら、韓国での放送と米国での公開の時間差を縮めている。

ハドソンAIは10月28~30日に東京で開かれたTIFFCOM 2026で、1本の映像の中の40人以上の登場人物を聞き分けて別々の声で吹き替え、AIエージェントがセリフごとに品質をチェックする「エージェンティック吹き替え」を披露した。韓国プロ野球(KBO)中継を米国・ニュージーランド・オーストラリア向けにリアルタイムでAI吹き替えする事業も手がける。

カンヌのラウンドテーブルの主題はK-ダンス… 「若い視聴者をつかむジャンル」

ハドソンAIはK-ダンスチャンネルの取り組みを欧州の事業者にも紹介した。MIPCOM開幕前日の10月11日、仏カンヌのパレ・デ・フェスティバルで開かれた非公開ラウンドテーブルで、申賢珍代表はハドソンAIが今年のCJ ENM K-ダンス・フラッグシップチャンネルのコンソーシアムを率いていると紹介し、俳優の泣き声まで再現したドラマ吹き替えを実演した。ラウンドテーブルは本誌の発行元であるK-EnterTech Hubが主催した。

ハドソンAIの申賢珍代表の韓国語の発言が英語・スペイン語・ポーランド語・ルーマニア語・ロシア語に同時に訳される通訳画面と、タブレットのプロ野球中継の吹き替えを見るインガ・アリカ氏、マルティナ・ドブジャンスカ氏、カリナ・ロンパ氏(手前から)。10月11日、カンヌ。写真=K-EnterTech Hub

リガでメディア・ストリーミング戦略のコンサルティング会社Alika Media and Techを率いるインガ・アリカ(Inga Alika)氏は「誰もが若い視聴者をつかみたい。だからK-ダンスには大きな可能性がある」と述べた。欧州の通信会社や有料放送事業者が若年層に届かないという課題が理由だ。楽天TV出身でワルシャワのコンサルティング会社Media Hansaを創業したカリナ・ロンパ(Karina Rompa)氏は、ワルシャワの韓国ブランドイベントにK-POPダンスクルーが押し寄せ、K-POPコンサートは毎回完売すると紹介した。無料チャンネルは韓国コンテンツを見たことのない視聴者にとって「障壁がない(no blocker)」とも述べた。

K-ダンスを欧州のチャンネルに迎える条件としては言語が挙がった。ワルシャワのTVエージェンシーMedia Spursのマルティナ・ドブジャンスカ(Martyna Dobrzańska)パートナーシップ責任者は「ポーランド語は小さな言語ではない。小さな言語などない」とし、ポーランドのパートナーにはポーランド語版が必要だと語った。ポーランドには有料放送事業者が約300社、ラトビアには約70社あり、ラトビアではラトビア語版がなければロシア語吹き替えを流せない。アリカ氏は、2019年のラトビアで違法視聴の1位が韓国コンテンツだったと紹介した。設備も条件だ。欧州の通信会社の多くはサーバーサイド広告挿入(SSAI)の設備がなく、FASTチャンネルを編成できないと参加者は説明した。申代表はラトビア語・ポーランド語の10分程度のテスト吹き替えを提案した。LGチャンネルは7月にポーランドへ進出し、欧州17カ国にサービスを広げた。

Netflix韓国進出10年… K-FASTは1年で22カ国・累計視聴者1億人

Netflixは2016年1月に韓国でサービスを始め、今年10周年を迎えた。10月23日に開設した10周年記念サイトでは、世界の会員の80%が韓国コンテンツを視聴し、2021年からの5年間でグローバルTOP10入りした韓国作品が200本を超えたと明らかにした。24~25日の「ネトフリ祭り(넷플잔치)」にはオンライン・オフラインで359万人が参加した。今年上半期のNetflixのシリーズ視聴時間に占める韓国作品の比率は11%で、米国に次ぐ2位だった。

韓国国内の視聴は二つの米国プラットフォームに集中している。モバイルインデックスによると、6月の月間アクティブユーザー(MAU)はNetflixが1617万人、TVING(티빙)969万人、Coupang Play(쿠팡플레이)885万人、Wavve(웨이브)397万人。ワイズアプリ・リテールの調査では、今年1~5月の動画アプリの月間平均利用時間はYouTubeが1136億分、Netflixが56億1000万分だった。政府の放送映像・配信向けコンテンツ制作支援予算399億ウォンは大半が作品制作に充てられる。韓国コンテンツ振興院の金智賢(キム・ジヒョン)博士は7月、MTN(머니투데이방송)の報道で「流通・プラットフォームの競争力強化が必要だ」と指摘した。

韓国の動画配信アプリMAUと動画アプリ月間平均利用時間。資料=モバイルインデックス、ワイズアプリ・リテール

K-FASTは別の流通経路だ。チャンネルのブランドと編成権を韓国の事業者が持ち、Samsung TV PlusとLGチャンネルという韓国製スマートTVのプラットフォームで配信する。科学技術情報通信部は2025年に事業を始める際、世界6億台のスマートTV供給網を根拠に挙げた。CJ ENMが一部大手プラットフォームと結んだインベントリー分割はコンテンツ事業者が広告主と直接取引する仕組みで、K-ダンスはその上に一つのフランチャイズでチャンネルブランドを築いた例だ。

支援規模は1年目より縮小した。1年目は補正予算80億ウォン(約600万ドル)で、プレミアムチャンネルにコンソーシアム当たり12億ウォン(約90万ドル)前後、フラッグシップチャンネルに2億1000万ウォン(約15万7000ドル)前後を配分して20チャンネルを構築し、配信開始から5カ月で累計視聴者1億人を記録した。2年目は3コンソーシアム・4チャンネルで1チャンネル当たり2億3000万ウォンだ。科学技術情報通信部の2027年予算案はAIに9兆4211億ウォン(約70億6000万ドル)を配分したが、発表資料にK-FAST事業の規模は別途示されていない。同部の南錫(ナム・ソク)通信政策官は7月、「持続可能なK-FASTエコシステムづくりへの支援を惜しまない」と述べた。

チャンネル開設の次の課題は、現在の支援の範囲外にある。CJ ENMが来年の課題に挙げたチャンネルごとの視聴時間拡大と広告販売、カンヌで欧州の事業者が求めたポーランド語・ラトビア語などの言語拡大は、1年単位のチャンネル構築支援では解決しない。NetflixとYouTubeが韓国コンテンツの世界流通と国内視聴を広げた10年間、韓国の事業者がチャンネルと広告を自ら握る経路はまれだった。K-FASTは1年でその経路を開いた。成果が確認された以上、政府支援も単年の構築事業から、複数年の運営・現地マーケティング・言語拡大の支援へとつなげる必要がある。

チャンネルの次の課題は広告収入… 一部大手とインベントリー分割

CJ ENMの北米FAST事業はこれまで、プラットフォームが広告を販売し、CJ ENMが収益の一部を受け取るレベニューシェアが中心だった。朴氏は、この仕組みは初期の流通拡大には役立ったが、広告主にコンテンツの価値を直接訴えたり、広告商品の価値を高めたりする機会が少なかったと語る。今年から一部の大手プラットフォームとインベントリー分割に切り替え、広告枠の一定割合を自社で販売し、米国法人と広告営業チームを中心に直接広告事業を広げる計画だ。分割比率は公表していない。

CJ ENMの北米FAST広告収益モデル転換の概念図。資料=StreamTV Insiderのインタビューを再構成

CJ ENMはFAST・AVODに、YouTubeとK-POPファンプラットフォーム「Mnet Plus(엠넷플러스)」を組み合わせた統合広告商品を準備している。FAST・AVODはテレビ画面でのブランド認知、YouTubeはより広いデジタルリーチ、Mnet Plusはファンの能動的な参加を担う。Mnet Plusの月間アクティブユーザーは2025年10月時点で2000万人だった。朴氏は「IPを通じて異なる視聴体験やファンダム体験をつなげば、広告主に表示回数以上のマーケティング価値を提供できる」と述べた。

壁はデータと露出枠だ。FAST配信ソリューション企業WurlのDave Bernath CEOは今年のStreamTV Showの基調講演で、チャンネルの成否はUI・番組表(EPG)上の配置、視聴データの開示、収益・インベントリーモデルといったプラットフォーム側の判断に左右されると指摘した。朴氏もコンテンツ供給側はプラットフォームほど詳細な視聴者データを得られないと認める。CJ ENMはグローバルなストリーミングで話題の作品の出演者が出る番組を編成したり、米国の祝日やマーケティング時期に合わせたテーマ編成を組んだりして補っている。朴氏は「米国FASTのプロモーションは見慣れた米国のシリーズや映画、既存のライブラリー作品が中心だ」とし、韓国コンテンツのように新たな需要を生む番組にもっと露出機会がほしいと語った。

CJ ENMが広告の直接販売に乗り出した背景には、韓国国内のテレビ広告の縮小がある。韓国金融監督院の電子公示と青年日報の報道によると、CJ ENMのテレビ広告売上は2021年の5433億ウォン(約4億700万ドル)から2025年には3336億ウォン(約2億5000万ドル)へ39%減り、2026年1~3月期は537億ウォン(約4020万ドル)と前年同期比22.1%減少した。海外FAST広告でその分を補うには、プラットフォームが売った広告の配分を待つ仕組みだけでは限界がある。

韓国の放送局にも同じ問いが残る。K-FAST1年目の20チャンネルは既存ライブラリーを吹き替えて配信することに重きを置き、広告収入の大半はプラットフォーム販売分の配分に頼る。政府は2年目から単純な海外配信を超えてFASTオリジナルや最新コンテンツを増やし、最新の広告技術を取り入れる方針を示した。CJ ENMはその段階に進むにあたり、米国法人の広告営業チーム、プラットフォームとのインベントリー交渉、韓国での放送直後の公開を可能にするAIローカライズをそろえた。米国に広告営業組織を持たない放送局はレベニューシェアにとどまる可能性が高い。

日本の事業者にとっても無関係ではない。ハドソンAIはTIFFCOMで、日本のケーブル放送局と多言語吹き替えの商用化を協議していると明らかにしている。

2027年の目標は広告収入… 看板IPを独立チャンネルブランドに

朴氏は2027年について、チャンネル数を増やすより、すでに入っているプラットフォーム内での存在感を高めると述べた。必要な場所にはチャンネルを加え、プラットフォームと発見・編成・プロモーションを連携してチャンネルごとの視聴時間を伸ばす。「CJ ENM番組の視聴成績がプラットフォームの利用と広告収入にも貢献するパートナーシップを築く」と語った。コンサートや授賞式などライブK-POPコンテンツでのFAST提携も進める。

長期目標はIP単位のチャンネルだ。朴氏は「看板フランチャイズがそれ自体でチャンネルブランドとなり、IP中心の多様なチャンネル構成を組める機会が生まれてほしい」と述べた。K-ダンスは『スウパ』という単一フランチャイズとその派生シーズン、デジタルクリップで24時間を埋めた最初の例だ。朴氏は「視聴習慣が定額制ストリーミングからFAST、AVOD、YouTube、縦型ショート動画へと分散するほど、幅広いジャンルで質の高い番組を作り供給する力が大きな競争力になる」と付け加えた。ハドソンAIコンソーシアムのスペイン語吹き替え版がメキシコと米国ヒスパニックの視聴者に届く時期が、この構想の最初の試金石となる。