グローバル・ステージ・ハリウッド映画祭2026 · Responsible AIセッション ①
原作者キム・サンホ氏が創作監修に参加… キャラクター参照からAI生成カットへ、最終判断は人が担う 米国展開はドキュメンタリーから
ハローワークス(HelloWorks)は、1959年に生まれた韓国SF漫画の主人公『正義の使者 ライパイ(Rayphie)』を生成AIで作り直している。原作者のキム・サンホ(Kim San-ho)氏がクリエーティブディレクションに加わる。同社は物語とキャラクターを再開発し、AIで映像の試作品を作ったうえでアニメーション制作に進む。
ライパイを米国の観客に紹介する最初の作品はドキュメンタリーとなる。続いてアニメシリーズを制作し、長編化も検討する。ハローワークス米国法人のディレクター、サム・ウー(Sam Woo)氏が10月3日(現地時間)、ハリウッドのTCLチャイニーズ・シアターで開かれたグローバル・ステージ・ハリウッド映画祭(Global Stage Hollywood Film Festival)の「Responsible AI」セッションでこの計画を発表した。セッションはKエンターテックハブ(K-EnterTech Hub)が企画し、ハローワークスとミレニアルワークス(Millennial Works)が共催した。
グローバル・ステージ・ハリウッドは、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)元幹部のダグラス・モンゴメリー(Douglas Montgomery)氏が日米エンターテインメント産業の双方向の懸け橋を目的に設立した非営利の映画祭で、TCLチャイニーズ・シアターを会場とする。今年は10月2日、『90メートル』の上映で開幕した。3日には二つのAIセッションが開かれ、「Responsible AI」は韓国企業が主導したセッションだった。

ライパイは、キム氏が1959年に描いた『正義の使者 ライパイ』の主人公だ。22世紀を舞台にした同作は韓国SF漫画の先駆的作品とされる。ウー氏はパネル討論で「韓国で初めて作られたスーパーヒーローの物語だ」と述べた。「1959年の韓国は戦争からようやく抜け出したばかりで、子どもたちには応援できるものが何もなかった」

フォロワー155万人のスタジオ… 舞台ミュージカルの映像もAIで制作
ハローワークスはストーリー開発で8年、ショートドラマとユーチューブ(YouTube)制作で4年の実績を持ち、自社チャンネルのフォロワーは合計155万人に上る。舞台ミュージカル『ドリトル先生(Doctor Dolittle)』では、劇中の映像コンテンツをすべてAIで制作し、画面上のキャラクターの動きを生身の俳優に合わせた。『My Boyfriend Is a K-POP Idol』や『You Don’t Know Me?』など、一人称視点のVRドラマのパイロット版も手がけている。

同社は次の作品を自社IPから選んでおり、前面に出したのがライパイだ。プロデューサーのピョン・ヨンギュ(Yeongkyu Byeon)氏は今月初め、シンガポールで開かれたAICON 2026の「コリアンAIフィルムメイキング・マスタークラス」の発表資料で、このプロジェクトを「AIで伝説を再生する」と紹介した。
キャラクター参照→AI生成カット→編集… 判断は人が下す
制作は3段階で進む。まず角度、表情、動きを網羅したキャラクター参照資料を作る。次にAIがキャラクター、背景、動きのカットを生成する。最後に演出、編集、音響を加えて作品に仕上げる。ハローワークスは、キャラクターの同一性を保ちながら新たな映像表現を探ることを狙いとしている。

どのAIカットを採用するかは人が決める。ハローワークスの判断基準は、キャラクターに合っているか、場面の感情を伝えているかの二つで、効率の試算には修正と編集の時間も含めている。ウー氏は「脚本家がいて、そのうえでキャラクター造形の見え方についてプロンプトを入れていく」と説明した。「1959年に生まれたキャラクターを扱うのは楽しいが、それでも登るべき山は高い」

韓国ドラマのサウンドトラックに携わってきた作曲家・歌手でもあるウー氏は、代償にも触れた。「音楽制作は以前とは違う。時間とコストを大幅に節約できる」と述べたうえで、「しかしその間にいる人たち、実際に楽器を演奏するセッションミュージシャンは仕事を失いがちだ」と語った。ハリウッドには労働組合があるが、韓国では議論が続いており、法整備は技術に追いついていないという。

米国展開はドキュメンタリーから… 投資・配給パートナーを募る
ウー氏がハリウッドで示した資料の題名は「ライパイ・グローバル事業化計画」だった。ハローワークスは主人公のほかに、原作に登場する乗り物や装備を個別の資産として整理している。チェビヤン(Jebi-yang)が操縦する多目的機「スワロー・クラフト」、戦闘と作業を兼ねる「ガイデッド・スピア」、携帯通信機、水中・空中戦用の大型メカ「スチール・ロボット」、それを支える航空機と浮遊母艦の編隊である。計画では、キャラクター、乗り物、メカ、世界観のIPを束ね、映画、アニメ、ゲーム、玩具、コレクターズアイテム、ライセンス事業に展開する。


ウー氏はライパイを紹介する短編ドキュメンタリーで発表を始めた。米国展開も同じ順序で、キャラクターと原作者を描くドキュメンタリーを先に出し、アニメシリーズ、長編へと進む。韓国の観客は歴史物語を好むと同氏は述べ、それがドキュメンタリーを先行させる理由の一つだと説明した。ハローワークスはライパイの制作過程を追う別のドキュメンタリーも計画している。
開発と制作はハローワークスが主導する。同社は開発・制作に出資する投資家と、作品の発注・配給を担う動画配信サービス、放送局、海外パートナーを探している。

米国パートナーの最初の質問は「どうローカライズするのか」
「最初に聞かれるのは、どうローカライズするのかということだ。欧州でも中国でもなく、米国の観客にどう合わせるのか」とウー氏は話した。米国で育ち、2004年に韓国へ移り、昨年米国に戻った同氏は、その答えを韓国の伝統に見いだした。『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ(KPop Demon Hunters)』を例に挙げ、「最も韓国的な伝統が、世界の舞台で最も大きな力を持つ。鍵は伝統を親しみやすい形式とどう組み合わせるかだ」と語った。

もう一つの問題は権利の所在だ。ウー氏は「ネットフリックス(Netflix)はネットフリックス、HBOはHBOで、彼らのルールに従うしかない」と述べ、『イカゲーム(Squid Game)』を、収益の大半を手にできなかった韓国の制作者にとっての教訓として挙げた。
展望:原作者とともに、IPを手元に置いたまま海外へ
ライパイは、存命の原作者と、開発の主導権を持つ韓国スタジオが組んだプロジェクトだ。同じパネルで、コピーサイト(CopySight)のアルテム・"トミー"・ペトロフ(Artem "Tommy" Petrov)CEOは、韓国のIP保有者に対し、グローバルプラットフォームへの一括売却から、所有権を国内に残す継続的なライセンス供与へ移るよう促した。ライパイがその道をたどれるかは、ハローワークスが配給パートナーと結ぶ契約条件に左右される。

韓国の放送局や制作会社も同じ選択を迫られている。生成AIは旧作やアーカイブを作り直すコストを下げている。そのIPが収益を生み続けるかどうかは、ハローワークスがキム氏と進めているように原作者との権利関係を整理し、海外契約で所有権とAIによる派生権を明文化できるかにかかっている。
「」内の発言は2026年10月3日のセッションでのもので、英語の発言を日本語に訳し、分かりやすさのため一部を整えた。「」のない文は壇上での発言の要約である。筆者は同セッションの進行役を務めた。
プロジェクトの内容は、10月3日のセッションでの発言と、ハローワークスのピョン・ヨンギュ・プロデューサーによるAICON 2026「コリアンAIフィルムメイキング・マスタークラス」の発表資料に基づく。