IMAX過去最高決算 プレミアム上映の収益力と大作1本への依存

IMAXの7〜9月期は売上高1億7460万ドル、純利益1億1710万ドルと創業以来最高の四半期となった。興収7億1200万ドルの76%を全編IMAXカメラで撮影した『オデュッセイア』が稼ぎ、韓国でも同作のIMAX動員が170万人と過去最多を記録した。プレミアム上映が利益率を69.3%に押し上げた一方、1作品への依存と受注残の減少が課題として残る。放送局が公演やスポーツを劇場向けに売るには、上映権と収支の整理が先になる。

IMAX過去最高決算 プレミアム上映の収益力と大作1本への依存

7〜9月期の売上高1億7460万ドル(約276億円)、調整後EBITDA利益率69.3%。興収7億1200万ドルの76%が『オデュッセイア』、韓国のIMAX動員は170万人

IMAX(アイマックス)は5日(米国時間)、2026年7〜9月期決算を発表した。売上高は前年同期比64%増の1億7460万ドル(約276億円)で、創業以来最高の四半期となった。純利益は1億1710万ドル(約185億円)と前年同期の2260万ドル(約36億円)の5倍を超えた。調整後1株利益(EPS)は2.21ドルで、市場予想の1.02ドルの2倍を上回った。

業績を押し上げたのはクリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督の『オデュッセイア』(原題:The Odyssey)だ。長編映画として初めて全編をIMAXフィルムカメラで撮影した。同期にIMAX劇場で売れたチケットの総額(世界興収)は四半期最高の7億1210万ドル(約1124億円)で、このうち約76%にあたる5億3800万ドル(約850億円)を同作1本が稼いだ。

利益は売上高より速く伸びた。調整後EBITDAは1億2090万ドル(約191億円)、利益率は前年同期より20.7ポイント高い69.3%だった。世界興収は劇場が売ったチケットの総額で、IMAXの売上高はそこから受け取る興収の配分と、上映システムの販売・リース、保守収入で構成される。設置済みの劇場でチケットがより多く、より高く売れれば、コストはほとんど増えずに配分収入が増える。リッチ・ゲルフォンド(Rich Gelfond)最高経営責任者(CEO)は決算資料で、AIが広がるほど希少なイベントや体験の価値が高まるとし、事業の好機に挙げた。

四半期興収の4分の3が1作品から生まれたため、次の四半期は後続作の興行にかかる。設置待ちの受注残は前年の478から409に減り、IMAXの株価は決算発表当日、取引開始前に1.2%上昇するにとどまった。

韓国でも同作のIMAX動員が記録を作った。8月5日に公開され33日で観客1000万人を突破し、このうちIMAXの観客は9月5日時点で約170万4000人と、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の韓国IMAX最多記録(約92万9000人)を上回った。日本では9月11日に公開され、10月5日に興収20億円を突破した。

全編をIMAXフィルムカメラで撮影した『オデュッセイア』の一場面。同作は7〜9月期のIMAX世界興収の76%を占めた。写真=ユニバーサル・ピクチャーズ

売上高1億7460万ドル、調整後EBITDA利益率69.3%…純利益は前年の5倍

部門別では、興収配分が入るコンテンツ・ソリューション部門の売上高が110%増の9400万ドル(約148億円)、売上総利益率は76%だった。上映システムの販売・リースが中心のテクノロジー製品・サービス部門は28%増の7730万ドル(約122億円)。全社の売上総利益率は9.2ポイント上昇の72.3%となった。

純利益には一時的な要因も含まれる。カナダの繰延税金資産に計上していた評価性引当金3670万ドル(1株当たり0.63ドル)を取り崩した。希薄化後EPSは1.96ドル、調整後EPSは2.21ドル。営業キャッシュフローは28%増の8600万ドルだった。ナターシャ・フェルナンデス(Natasha Fernandes)最高財務責任者(CFO)はアナリスト向け説明会で、ネットワークを広げ興収を伸ばすほど営業レバレッジが大きくなると述べた。

IMAXの四半期売上高・純利益の推移(2023年1〜3月期〜2026年7〜9月期、単位:百万ドル)。出所=IMAX四半期開示(TheWrapのグラフを再作成)
項目2025年7〜9月期2026年7〜9月期増減
売上高1億670万ドル1億7460万ドル+64%
純利益2260万ドル1億1710万ドル約5.2倍
調整後EBITDA5180万ドル1億2090万ドル+133%
調整後EPS0.47ドル2.21ドル+370%
世界興行収入3億6760万ドル7億1210万ドル+94%
現地語映画の興収1億2020万ドル(33%)3650万ドル(5%)-70%

出所=IMAX 2026年7〜9月期決算資料・四半期報告書(10-Q)

IMAXが公表した7〜9月期の業績概要。売上高1億7500万ドル(+64%)、売上総利益1億2600万ドル(+88%)、調整後EBITDA1億2100万ドル(+133%)、世界興収7億1200万ドル(+94%)と、同期の興収上位4作品を示した。出所=IMAX

世界興収7億1200万ドルの76%が『オデュッセイア』…現地語映画の比率は33%から5%に

同期にIMAXで上映された作品は32本。『オデュッセイア』に続いたのは『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の5800万ドル、『バイオハザード』(原題:Resident Evil)の2400万ドル、『アベンジャーズ/エンドゲーム』再上映の1700万ドル、『ミニオンズ&モンスターズ』の1000万ドルだった。IMAXは世界のスクリーン数の1%未満で、同期の世界興収の6.7%を獲得した。

現地語映画の興収は3650万ドル(約58億円)で全体の5%。前年同期は1億2020万ドル(約190億円)で33%を占めていた。この比率は四半期ごとのハリウッド大作の公開日程によって大きく変わる。IMAXは2025年に14カ国67本の現地語映画で4億500万ドルを稼ぎ、年間最高を記録している。

上映フォーマットでも需要の差が出た。同社が18K相当の画質とうたう70mmフィルム上映ができるIMAX劇場は世界に41カ所しかないが、8月10日までに3750万ドルを稼いだ。ロサンゼルスのTCLチャイニーズ・シアター1館の興収は280万ドルで、北米のIMAX劇場として単一作品の最高記録となった。

IMAXの7〜9月期世界興収の内訳比較(単位:百万ドル)。出所=IMAX四半期報告書(10-Q)

通期興収14億ドルの見通し超えへ…受注残は478から409に

IMAXは通期の世界興収見通しである過去最高の14億ドル(約2211億円)を上回ると見込む。今年に入り105システムの導入契約を結び、うち65%が新規立地だ。ゲルフォンドCEOは欧州で13館の契約が近くまとまると説明した。9月末の上映ネットワークは91の国・地域で1887システムと、前年の1829から増えた。日本でも今年、新たに7カ所の導入契約を結んでいる。

設置待ちの受注残は前年の478から409に減った。中華圏で契約見直しにより17カ所が受注残から外れた。7〜9月期の設置数も32と前年同期の38を下回った。同社は70mmフィルム上映館を10〜15カ所増やすほか、小規模な超高級劇場など新しい劇場コンセプトを試験運用している。『オデュッセイア』のポップコーンバケットに続き、東宝と『ゴジラ-0.0』のアパレルを展開するなど物販も広げている。

ネットフリックス『クリフ・ブース』を550館で2週間上映…公開から配信まで4週間

ネットフリックス(Netflix)初のIMAX公開作として、デヴィッド・フィンチャー(David Fincher)監督、ブラッド・ピット(Brad Pitt)主演の『The Further Mis-Adventures of Cliff Booth』が11月25日に世界550館以上のIMAXで公開され、2週間上映された後、12月23日にネットフリックスで配信される。劇場公開から配信までは4週間だ。

米大手チェーンのシネマーク(Cinemark)とリーガル(Regal)はIMAXスクリーンでの上映を見送り、米国ではAMCが独占上映する。もともとこの枠に入る予定だったグレタ・ガーウィグ(Greta Gerwig)監督のネットフリックス作品『ナルニア:魔術師のおい』が2027年2月12日に公開を移したため、ネットフリックスとIMAXはすべての劇場に上映を義務付けないことで合意した。ゲルフォンドCEOは説明会で、一部の劇場がネットフリックスの短い上映期間を問題視していると述べ、それは「すでに決着がついた争いだ」と語った。

韓国のIMAX動員170万人…客単価1万969ウォンで今年最高

『オデュッセイア』は韓国で公開4日で100万人、13日で500万人、24日で800万人を突破し、33日目の9月6日に1000万人に達した。3月の『王と生きる男』(왕과 사는 남자)に続く今年2本目、外国映画として10本目の1000万人作品で、ノーラン監督作としては2014年の『インターステラー』以来2本目となる。

観客は劇場を選んで足を運んだ。IMAX本来の1.43対1の画面比を韓国で完全に再現できるのは、CGV龍山アイパークモールのIMAX館1館だけだ。同館のチケットは中古取引サイトで定価の数倍の10万ウォン(約1万2000円)台で取引され、CGVは1人当たりの予約枚数を制限した。特別館の料金とリピート鑑賞が重なり、同作の客単価は1万969ウォン(約1290円)と今年の主要ヒット作で最も高かった。

映画館全体の観客も増えた。8月の韓国の映画館入場者数は1950万人で前年同月比45%増。CJ CGVの株価は7〜9月期だけで24%上昇し、証券業界は同社の7〜9月期営業利益を564億ウォン(約66億円)と予想した。

韓国で公開されたIMAX作品の最多動員比較(万人)。出所=韓国映画振興委員会統合電算網・CGV(9月5日時点)

スクリーン数の6%で興収の15%…生成AI時代に価値が上がる没入型体験

ゲルフォンドCEOは今回の決算資料で「IMAXの覚醒(IMAX awakening)」という言葉を使った。世界中で、とりわけ若い世代が個人の画面より大きな共有体験やつながりを求める流れの中にIMAXがあるという説明だ。生成AIで映像の制作コストが下がり、個人の画面に流れるコンテンツが増えるほど、同じ時間、同じ場所で大きな画面を共に見る体験が希少になる、というのがIMAXの主張である。

米劇場チェーンのシネマーク(Cinemark)は1〜3月期決算で、プレミアム・ラージ・フォーマット(PLF)のスクリーンは全体の約6%だが興収の約15%を占めると明らかにした。CJ 4DPLEXのScreenXと4DXは2026年上半期に北米で7000万ドル(約111億円)を稼ぎ、前年同期比26%増えた。ソニーの『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は、当初からScreenX上映を前提に撮影したハリウッド初の「Shot for SCREENX」作品だ。撮影段階で上映フォーマットを決める手法が、『オデュッセイア』に続き他の大作にも広がっている。

韓国でも特別館の売上が急増している。韓国映画振興委員会(영화진흥위원회)の「2026年上半期韓国映画産業決算」によると、劇場の特別上映売上は457億ウォン(約54億円)で前年同期比56.3%増えた。IMAX・4DX・ドルビーシネマ・ScreenXの座席は2万ウォン(約2350円)前後と、一般館の大人料金1万3000ウォン(約1530円)より高い。昨年公開の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は観客457万人ながら、チケット売上524億ウォン(約62億円)の約半分を特別館で稼いだ。

観客はAIが制作に使われたかどうかも気にしている。ルミネイト(Luminate)が2026年7月に出した報告書「AI & Media: Audience Attitudes」では、回答者の93%が映画やテレビでAIを使った場合は開示すべきだと答えた。画面の中のコンテンツの出自を問う観客が増えるほど、大画面と音響、共に見る観客という劇場の条件は、AIで置き換えられない体験として価格を得る。

韓国の放送業界への示唆

放送メディア通信委員会(방송미디어통신위원회)が6月に公表した2025会計年度の放送事業者財産状況によると、韓国の放送広告売上は2兆134億ウォン(約2369億円)で前年比12.3%減った。2021〜25年にモバイル広告市場が年平均7.5%伸びた一方、放送広告売上は年平均10.6%減少した。広告だけで制作費を回収しにくくなり、公演や授賞式、スポーツを有料上映商品として別に売る案が検討対象に上っている。ただ、『オデュッセイア』の客単価1万969ウォンは観客1人が払った平均チケット代で、69.3%はIMAX全社の調整後EBITDA利益率だ。どちらも放送局が劇場事業で得られる収益率を示す数字ではない。

劇場は映画以外のコンテンツも増やしている。IMAXは今年、アップル(Apple)と組んでF1のレースを北米のIMAX劇場で生中継した。CGVは2026年KBOポストシーズン全試合をScreenXで中継し、HYBE(하이브)は配給会社トラファルガー・リリーシングと組んで10月24〜31日、約50カ国1100館以上で「HYBE CINE FEST 2026」を開いた。放送局は音楽番組や授賞式、スポーツ中継を制作してきたが、放送権に劇場上映権は含まれない。出演者や音源、試合の権利者と国内外の劇場上映範囲を別に契約し、追加の権利料と配給手数料を差し引いた収支を先に計算する必要がある。

ドラマの初回や特別番組を劇場で先行公開する場合も同じ条件が問われる。ネットフリックスは『クリフ・ブース』を2週間劇場で上映し、公開4週間後に配信する。放送局が劇場先行公開を行うなら、上映日数に加えてオンライン公開の時期、最低保証額、収益配分を劇場チェーンと決め、既存の放送・配信契約と重ならないかも確認しなければならない。リーガルとシネマークが『クリフ・ブース』の上映を断った理由も短い上映期間だった。

7〜9月期にIMAXの現地語映画の比率が33%から5%に下がったのは、その四半期の公開作の構成が変わった結果で、韓国コンテンツへの需要が減った根拠ではない。ハリウッド大作が集中しない時期に上映枠を確保し、ファン層が確認できている公演や特別番組から少数の劇場で上映して、座席占有率と追加コストを確かめる進め方がリスクは小さい。IMAXは2024年の投資家向けイベントで、自社カメラで撮影した映画は平均で約20%高い成績を上げると説明したが、この比較には作品規模や配給条件の違いも含まれている。

結論・展望:『デューン 砂の惑星 PART3』の前売り3000万ドル…1本への依存が課題

10〜12月期には12月に『デューン 砂の惑星 PART3』(原題:Dune: Part Three)が公開される。IMAXの前売りはすでに3000万ドル(約47億円)と同社史上2番目の水準だ。『ハンガー・ゲーム:サンライズ・オン・ザ・リーピング』、インド映画『ラーマーヤナ』、中国公開を控える『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』も続く。日本では11月3日から『ゴジラ-0.0』のIMAX限定先行上映が始まった。2027年は『スター・ウォーズ:スターファイター』『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』『マン・オブ・トゥモロー』『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』『アナと雪の女王3』が控え、初代『スター・ウォーズ』が初めてIMAX 70mmフィルムで上映される。IMAXは追加契約を固めた上で2027年の見通しを示す方針だ。

IMAXの次の課題は、記録的な一つの四半期を毎期繰り返される収益に変えることだ。7〜9月期の興収の4分の3が1作品から生まれ、受注残と四半期の設置数は前年を下回った。10〜12月期と2027年のラインアップが『オデュッセイア』後の売上をどこまで支えるかが、次の決算の変数になる。

韓国では1.43対1の劇場はCGV龍山アイパークモールの1館だけで、CGVは下半期、汝矣島に3面LEDのScreenX館を開く。特別館が増えても、放送局がその画面にコンテンツを供給するには、保有IPの劇場上映権と公開順序を整理し、権利料・制作費・配給費を差し引いた収益を計算できなければならない。少数の劇場での上映実績を積み、再上映や海外の劇場販売へ広げることが、放送局が取り得る道筋だ。