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企業価値の中心、設備からIPへ
S&P500時価総額の92%が無形資産…パラマウントは17兆円を投じてフランチャイズを買い、韓国はIPファンド2000億ウォンで権利確保へ

S&P500の時価総額に占める無形資産の比率は1975年の17%から2025年に92%へ。グラフィック=K-EnterTech Hub
パラマウント(Paramount)は10月6日、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収を完了した。負債を含む企業価値で約1100億ドル(約17兆3000億円)の取引で、WBDのハリー・ポッターやDCと、パラマウントのトップガンが一つの会社に入った。パラマウントが巨額の借り入れまでして買ったのは、スタジオの敷地や送出設備ではない。数十年にわたって劇場・配信・ゲーム・グッズで繰り返し売れるフランチャイズの権利だ。
ハリウッドがIP確保にこれほど資金を投じる理由は、数字で確かめられる。米S&P500採用企業の時価総額の92%を無形資産が占めた。知的財産(IP)コンサルティング会社オーシャントモ(Ocean Tomo)が2月12日に公表した2025年無形資産市場価値(IAMV)調査の結果だ。工場・設備・在庫などの有形資産は8%に縮小した。半世紀前の1975年は、有形資産が83%、無形資産が17%だった。
メディア業界はこの数字をIP獲得競争の根拠と読む。米アクシオス(Axios)のメディア担当記者サラ・フィッシャー(Sara Fischer)は、オーシャントモのデータで描いたチャートに「オリジナルIPの黄金期」という見出しを付けた。同じチャートを韓国から見ると、問いが変わる。ネットフリックス(Netflix)は24日にソウルで韓国サービス10周年の行事を開いた。この1年間に世界の会員が韓国コンテンツを視聴した時間は120億時間を超える。それでも韓国の制作会社がネットフリックス・オリジナルで得るのは制作費の3〜10%の利幅で、ネットフリックスの韓国法人は昨年の国内売上の81%を米本社に送った。『イカゲーム』や『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のように韓国で生まれ、あるいは韓国の題材で世界的にヒットした作品でも、続編・ゲーム・グッズにつながる権利の多くは海外企業が握っている。韓国政府が今年、原作IP確保を狙うIPファンド2000億ウォンを別に組成するのはこのためだ。

半世紀で「経済の逆転」…利上げ局面でも90%前後
オーシャントモは、企業の時価総額から純有形資産を差し引いた残りを無形資産の市場価値として算出する。帳簿上の特許や商標だけを数える方式ではない。時価総額に織り込まれたブランド、ソフトウェア、データ、顧客ネットワークに加え、投資家の成長期待もこの値に含まれる。
この方式で見た米国企業の価値構成は、1985〜2005年の20年間で逆転した。無形資産の比率は1985年の32%から1995年に68%、2005年に79%へ上がり、20年で47ポイント高まった。1985〜1995年の10年間だけで36ポイント上昇した。オーシャントモはこの変化を「経済の逆転(economic inversion)」と呼ぶ。その後、2015年に84%、2020年に90%に達した。
2020〜2025年の数字には金利の影響が反映されている。この期間、米連邦準備制度理事会(FRB)は過去40年で最も急速な利上げを行ったが、無形比率は90%前後で大きく揺らがなかった。金利が上がると将来の成長期待に頼る価値から先に削られることが多いため、予想と異なる結果だ。オーシャントモは発表文で、利上げ局面でも比率が保たれた理由を今後の論文で扱うとしている。


米国だけの現象でもない。オーシャントモは2005年から欧州・中国・日本・韓国の株価指数も分析している。10月5日に公表した豪ASX200の分析では、無形比率が2000年の65.5%から2025年に74%へ上がった。日本や韓国の指数の2025年値は、公開要約にはまだ掲載されていない。

お金は工場からソフトウェア・ブランドへ…無形投資3.5%対有形0.98%
無形資産の比率が高まったのは、企業がお金を使う先が変わったからだ。世界知的所有権機関(WIPO)とイタリアのルイス・ビジネススクール(Luiss Business School)が7月に公表した『世界無形投資ハイライト2026』によると、2008〜2025年の世界の無形投資は実質で年平均3.5%増えた。同期間の有形投資の伸び0.98%の3.6倍だ。2025年の無形投資額は初めて10兆ドル(約1572兆円)を超えた。アクシオスのチャートに添えられた「2008年以降、無形投資は有形の3倍の速さで伸びた」という説明も、このWIPOの集計に基づく。
今年の報告書は29カ国を対象とし、カナダとフィリピンが初めて加わった。2015〜2025年に限ると無形投資は年4.4%、有形投資は1.8%増え、29カ国中22カ国で無形投資の伸びが上回った。米国は同期間に無形が年5.6%、有形が1.9%だった。
報告書が「最も顕著な例」として挙げたのが日本だ。日本は2019年まで有形・無形投資がほぼ同じペースで伸び、有形がやや上回っていた。その後、有形投資は2015年の水準を下回ったが、無形投資は伸び続けた。2014〜2024年の無形投資の伸びは年1.5%で、有形投資は横ばいだった。報告書はこれを景気循環ではなく構造変化と位置づけた。無形投資のなかではソフトウェア・データとブランドの伸びが最も速く、WIPOの2024年版は2011〜2021年に両項目が研究開発(R&D)の3倍の速さで伸びたと集計した。コンテンツ、ファンデータ、ブランドを扱うメディア産業は、この流れの真ん中にある。

ハリウッドは借金でフランチャイズを買った…スカイダンスの負債870億ドル
パラマウントはWBDの買収を終え、社名をスカイダンス(Skydance)に変えた。米証券取引委員会(SEC)への提出資料によると、新会社は映画スタジオ2社、グローバル配信サービス2つ、CBS・HBO・CNNを抱える。WBD株主は1株31.0167ドル(約4876円)を現金で受け取り、コードカッターズ・ニュースによると承認を得た法域は約70に上った。
この取引は最初からパラマウントのものだったわけではない。ネットフリックスは昨年12月、WBDのスタジオ・配信部門を約820億ドル(約12兆9000億円)で買うことで合意していた。しかしパラマウントがケーブル局を含む会社全体の買収を提案し、今年2月に契約を勝ち取った。

買収資金の多くは借り入れだ。ブルームバーグによると、スカイダンスの総負債は約870億ドル(約13兆6800億円)で、3年以内に60億ドル(約9430億円)のコストを削減する。その代わりにハリー・ポッター、バットマン、ロード・オブ・ザ・リング、スタートレックといったフランチャイズが一つの会社に集まった。スカイダンスは年間30本以上の劇場映画を公開し、劇場公開期間を最低45日確保するとしている。デビッド・エリソン(David Ellison)共同最高経営責任者(CEO)はブルームバーグに「統合会社は世界のどの会社よりもコンテンツとストーリーテリングにお金を使う」と語った。権利を持つ会社が窓口と期間を決め、その中で一つのIPが稼ぐ収入を増やすやり方だ。
権利を持つ側の交渉力は、今月の別の取引でも表れた。海外報道を引用した韓国ZDNetコリアの27日の記事によると、マイクロソフトのエックスボックス(Xbox)は自社ゲームIPの7年間の映像化権をめぐり、ネットフリックスが示した5億ドル(約786億円)に対して8億ドル(約1258億円)を求めた。交渉はネットフリックス側の担当幹部が今月初めに退社したことで白紙となり、エックスボックスは作品ごとの小規模な契約に方針を変えた。
アクシオスのチャートの3点目は、出版社や小売企業が自社顧客との直接の関係(ファーストパーティー)から利益を得ているという指摘だ。プラットフォームを介さずに集めた会員・購読データも、時価総額のうえでは無形資産に数えられる。配信サービス二つを抱えることになったスカイダンスの会員基盤も、この項目に入る。
韓国の題材、他人の契約書…『デーモン・ハンターズ』と『イカゲーム』
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ(KPop Demon Hunters)』はK-POPアイドル、巫俗、死神といった韓国の題材で、ネットフリックス史上最多視聴の映画になった。配信から90日で3億2510万回視聴され、63週連続でグローバルトップ10に入った。制作は日本のソニーグループ傘下のソニー・ピクチャーズ・アニメーションで、フォーチュン(Fortune)はネットフリックスがパンデミック期に作品を取得したと報じた。報道をまとめると、ネットフリックスが制作費約1億ドル(約157億円)を全額負担し、ソニーは定額の制作収入と音楽・出版関連の収入を受け取る条件だった。

米ハリウッド・リポーターは、ネットフリックスがソニーに約1500万ドル(約23億6000万円)の成功報酬を支払ったと報じた。ネットフリックスはこのIPの窓口を増やし続けている。配信の2カ月後に劇場で公開したシンガロング版は2日間で約1900万ドル(約29億9000万円)を稼いだ。テッド・サランドス(Ted Sarandos)共同CEOはブルームバーグのイベントで、2029年公開予定の続編を幅広い規模で劇場先行公開すると語った。今月は子ども向けゲーム「トッカ・ボッカ・ワールド」にもキャラクターを登場させた。物語の素材は韓国から来たが、続編・ゲーム・興行収入を分ける契約の当事者は米国と日本の企業だ。ヒット作をつくったソニーでさえ、権利の多くを配信事業者側に渡した。
『デーモン・ハンターズ』が契約構造を示すとすれば、『イカゲーム(Squid Game)』はその差を金額で示す。シーズン1〜3の累計視聴数は6億36万回で、IPはネットフリックスが持つ。当時の朴保均(パク・ボギュン)文化体育観光部長官は2022年7月21日の業務報告で、ネットフリックスが『イカゲーム』で1兆ウォン(約1176億円)を超える収益を上げた一方、IPを持たない韓国側が得たのは制作費を含めて300億ウォン(約35億円)に満たなかったと説明した。いずれも政府の推計値だ。

ネットフリックス韓国10年、売上の81%は本社へ…制作会社の利幅は制作費の3〜10%
ネットフリックス韓国10周年の行事で示された数字は、この構造の規模を示す。ネットフリックスは2016年以降、韓国の制作会社80社以上と200本を超える韓国作品をつくった。2025年4月から2026年3月までの韓国コンテンツの視聴時間は120億時間を超え、制作国別で米国に次ぐ2位だったと緑色経済新聞が伝えた。
お金の流れは10日前に明らかになっていた。韓俊鎬(ハン・ジュンホ)議員が分析した監査報告書によると、ネットフリックス・サービシズ・コリアの昨年の売上は1兆542億ウォン(約1239億円)で、2021年より66.9%増えた。その81%、8539億ウォンが「サブスクリプション会員権の購入費」として米本社に支払われ、韓国に残った営業利益は203億ウォン、営業利益率は1.9%だった。マネートゥデイは、本社への支払いは純利益ではなく、グローバルなコンテンツ制作費や運営費を含む金額だとも伝えた。同じ分析で、韓国の制作会社がネットフリックス・オリジナルで得るのは制作費の3〜10%程度の利幅だった。

制作会社がこの契約を受け入れるのは、リスクを避けられるからだ。韓国の世界日報が28日に報じたネットフリックス上陸10年の企画によると、ネットフリックス・オリジナルは制作費が保証され、10%前後の利幅を確保できる。放送局での編成のあと国内配信や海外に売る従来の経路では、制作費の回収率は70〜80%にとどまる。放送局と配信を合わせた韓国のオリジナルドラマ編成数も、2022年の136本から昨年は110本に減った。韓国国会には、著作権を譲渡した創作者もヒットに応じて追加報酬を請求できるようにする著作権法改正案が9月に提出されている。
権利を握って窓口を広げた韓国の例もある。カカオページのウェブ小説『俺だけレベルアップな件(Solo Leveling)』は世界累計143億回閲覧され、ウェブトゥーン・ゲーム・アニメへ広がった。アニメは2025年のクランチロール・アニメアワードで、韓国作品として初めて「アニメ・オブ・ザ・イヤー」を含む9部門を受賞した。ネットフリックスの実写ドラマは、原作IPを持つカカオエンターテインメントがサナイ・ピクチャーズと共同で制作する。スタジオドラゴンは4〜6月期にSBS・MBC・ディズニープラス・ネットフリックスへ販売先を広げ、放送話数を41話から77話に増やし、コンテンツ販売売上は1269億ウォン(約149億円)と37.3%伸びた。原作の権利を守るか、販売先を分ければ、媒体や窓口が増えるたびにライセンス収入も積み上がる。

IPファンド2000億ウォン…放送局の価値の根拠は送出網より権利に
韓国政府はお金の流れから変えようとしている。文化体育観光部は1月23日、韓国ベンチャー投資と共同で2026年母体ファンドの第1次出資を公告した。コンテンツ政策ファンドの組成目標は7318億ウォン(約860億円)で、前年比22%増の過去最大だ。最大の分野は、制作会社の原作IP確保を狙うIPファンド2000億ウォン(約235億円)で、アジア経済によると子ファンド1本あたり1000億ウォンが投じられる。輸出ファンド2000億ウォン、原作IPに基づくアニメーション専門ファンド117億ウォンも組成する。

放送局にとってはさらに切実な問題だ。放送通信広告費調査によると、韓国の地上波テレビ広告費は2014年の1兆8976億ウォン(約2231億円)から2024年に9273億ウォン(約1090億円)へ51.1%減った。広告収入が減るにつれ、送出網やスタジオなど有形資産が生む現金も減った。オーシャントモの方式で見れば、市場が放送局に付ける値は、繰り返し販売できるアーカイブ、フォーマット、キャラクターの権利から生まれる。

韓国の放送局や制作会社が海外配信サービスに作品を供給する際、海外販売権や二次事業権を渡す契約は、制作費を早く回収する方法だった。『デーモン・ハンターズ』や『イカゲーム』の例でその契約が失ったのは、続編・ゲーム・グッズ・ライセンス収入だ。同じ作品を無料広告型配信(FAST)チャンネル、海外リメイク、舞台で売り直す権利を誰が持つかで、放送局の次の収益源が変わる。日本の放送局が配信事業者と結ぶ契約でも、同じ条件が論点になる。
交渉すべきは制作費ではなく、権利の期間と範囲
92%という数字を不変の定数と見ることはできない。オーシャントモは、人工知能(AI)が学習データや独自モデルといった新たな無形資産を生む一方、既存の無形資産の陳腐化も早めていると指摘した。無形資産の市場価値には成長期待が含まれるため、金利や業績見通しが変われば一緒に動く。2020年以降5年間90%前後を保った比率が今後も続くかは、追加分析を待つ必要がある。
ネットフリックスの韓国投資が今の規模で続く保証もない。世界日報は、ネットフリックスの7〜9月期の株主向け書簡で韓国コンテンツへの言及は目立たず、インドと日本の成果がより大きく扱われたと指摘した。制作費の安い市場へ重心が移れば、権利を持たず利幅だけを受け取る制作会社の交渉力はさらに弱まる。
ハリウッドの次の段階は統合だ。スカイダンスはパラマウントとワーナー・ブラザースのフランチャイズを一つの映画グループで管理し、ネットフリックスとソニーは2029年に続編を劇場で先に公開する。いずれも新作より、既存IPを劇場・配信・ゲーム・グッズで何度使い直すかに事業計画をかけた。AIが制作コストを下げるほど希少になるのは、つくる能力よりも、実績ある物語とキャラクターを所有する権利だ。
韓国では今年組成するIPファンド2000億ウォンが原作IPの確保に使われる。その成果は投資件数より、海外プラットフォームとの契約で韓国の制作会社が続編や二次事業の権利をどれだけ残せるかで確かめられる。世界日報の企画で、尹ソンイ漢陽大学兼任教授は、制作会社がIPを持ち、プラットフォームには期間と地域を限った放映権だけを売る方式を代案として示した。1975年、米国企業の価値の83%は工場や設備といった目に見える資産だった。半世紀後の今、その場所は物語とキャラクター、データが占めている。韓国はネットフリックスとの10年で、世界が求める物語をつくれることを証明した。残る課題は、その物語が売り直されるたびに収益が戻ってくる契約書を書くことだ。無形資産が企業価値の9割を占める市場で、コンテンツ企業が交渉すべきは制作費ではなく、権利の期間と範囲だ。