FEATURE | Kエンターテック・グローバルサミット2026 基調講演 コ・サムソク教授(東国大学)
コ・サムソク教授:Kコンテンツの売上高は157兆ウォン、輸出は141億8,000万ドルに。主要SVODの現地オリジナル作品数で韓国は世界1位──それでも否定的な見方への同意は5年で30.7%から37.5%に上昇し、東南アジアでは「#SEAbling」ボイコットも起きた。共進化モデルの最初の実地テストは、9月にシンクレアのATSC 3.0網で始まる「Kチャンネル82」だ。

Kカルチャーの次の30年を決めるのは、さらなる量的拡大ではなく、AIとの「共進化」だ。2025年にミュージカル『もしかしたらハッピーエンディング』がトニー賞を受賞したことで、韓国は米国の4大エンターテインメント賞──エミー賞(『イカゲーム』、2022年)、グラミー賞(ソプラノ歌手スミ・ジョー、1993年)、アカデミー賞(『パラサイト 半地下の家族』、2020年)、トニー賞(2025年)──をすべて手にした、ごく少数の国の仲間入りをした。
韓国文化体育観光部によると、2025年のコンテンツ産業の売上高は157兆4,000億ウォン、輸出は141億8,000万ドルに達した。この10年、輸出はドル建てで年平均10.2%伸びてきた。だが量的成長だけの時代は終わりつつある。生成AIはいまや企画、制作、ポストプロダクション、マーケティング、消費というコンテンツのバリューチェーン全体で使われ、競争は「どれだけ輸出するか」から「どの技術と、どう組み合わせるか」へと移っている。
4月24日にソウルで開かれた「Kエンターテック・グローバルサミット@WIS 2026」で、大統領直属国家人工知能戦略委員会委員でKエンターテック・フォーラム常任議長を務める東国大学のコ・サムソク教授は、韓国のコンテンツ産業は「量的拡大から質的成熟へと移らなければならない」と述べ、その道筋は韓国のコンテンツと韓国のAIが一体となって世界に進出する「共進化」だと主張した。講演のタイトルは「Kカルチャーの未来:共進化とエンターテック」だった。
1.『愛が何だって』からEGOTまで:30年の軌跡

コ教授はBTSの「Aliens」の歌詞の一節から話を始めた。「Pardon Mr. Kim Gu, tell me how you feel」。3月21日にソウル・光化門一帯で開かれた再結集コンサートは、兵役を経て約3年ぶりにメンバー全員がそろった公演で、コ教授にとって単なる音楽イベント以上の意味を持っていた。成熟した産業の象徴だというのだ。
「BTSが少年から大人へと成長したように、Kカルチャーとコンテンツ産業も量的拡大を越え、質的成長、質的成熟へと進まなければならない」

1997年に中国のテレビでドラマ『愛が何だって』が放送されて始まった韓流は、30年でEGOTに到達した。2025年の『もしかしたらハッピーエンディング』のトニー賞受賞で、韓国は米国の4大エンターテインメント賞をそろえた。BBCは「韓国がEGOTを達成した」と報じた。韓国はもはやコンテンツの輸出国にとどまらず、韓国文化そのものがコンテンツになった。ワシントンD.C.とラスベガスでの会合から戻ったコ教授は、『KPop Demon Hunters(KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ)』の世界的なヒットで、米国の主流文化の内側での変化が目に見えるようになったと語った。
2. 157兆ウォン、141億8,000万ドル──そして現地オリジナル作品で世界1位

文化体育観光部「2025年コンテンツ産業調査」──2025年の売上高は157兆4,000億ウォン、輸出は141億8,000万ドル。2014〜2023年の年平均成長率はウォン建て売上高5.2%、ドル建て輸出10.2%。輸出は国内売上高のほぼ2倍の速さで伸びている。(出典=統計庁、文化体育観光部)
文化体育観光部の「2025年コンテンツ産業調査」によると、コンテンツ産業の売上高は157兆4,000億ウォン、輸出は141億8,000万ドルだった。2014年から2023年にかけて、売上高はウォン建てで年平均5.2%、輸出はドル建てで年平均10.2%伸びた。輸出の伸びは国内のほぼ2倍の速さだったことになる。モノに比べてサービスの輸出が弱かった韓国経済にとって、Kコンテンツは意味のある構造的な補完役になった。
グローバルなストリーミングでは、韓国の存在感はさらに際立つ。Luminateによると、2024年に米国系の主要SVODが発注した現地オリジナル作品の数で、韓国は約60作品で世界1位となり、日本(約35作品)とブラジル(約22作品)を大きく上回った。韓国がコンテンツ輸出国から、グローバルプラットフォームの現地オリジナル制作拠点へと移ったことを示すデータだ。
韓国国際文化交流振興院(KOFICE)が30地域のKコンテンツ消費者2万6,400人を対象にした「2026海外韓流実態調査」では、海外の人々が韓国から最初に連想するものとして、K-POPが9年連続で首位(17.5%)となり、韓国料理(12.1%)、ドラマ(9.5%)、ビューティー・化粧品(6.2%)、映画(5.9%)、IT製品・ブランド(4.8%)が続いた。サムイルPwCが引用した別の分析では、Kコンテンツが韓国製品の購入に影響すると答えた人の割合は26カ国平均で57.9%で、インドネシア(81.4%)、ベトナム(78.6%)、サウジアラビア(74.5%)、エジプト(74.0%)、インド(73.3%)、タイ(72.8%)、UAE(72.3%)では7〜8割に達した。
3. 37.5%の影──否定的な見方が増え、#SEAblingが出現

KOFICE「2026海外韓流実態調査」──韓流への否定的な見方への同意は2021年の30.7%から2025年には37.5%に上昇し、同じ期間に「同意しない」は48.2%から20.4%に急減した。(出典=韓国国際文化交流振興院)
コ教授は物語のもう一つの側面にも時間を割いた。KOFICEの追跡調査では、韓流への否定的な見方に同意する割合が5年連続で上昇している。2021年30.7%、2022年27.1%、2023年32.6%、2024年37.5%、2025年も37.5%だ。同じ期間、否定的な見方に同意しない割合は48.2%から20.4%へと半分以下に落ちた。Kカルチャーが色あせているのではなく、評価が二極化しているという構図だ。
2月、韓国のアイドルグループのクアラルンプール公演の後に起きた韓国とマレーシアのネットユーザーの衝突は一つの兆候だった。より構造的なのは、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、タイに広がった「#SEAbling」(東南アジア+兄弟姉妹)という連帯の動きで、SNS上で「韓国製品を買わない」キャンペーンとして展開されている。この摩擦はまだオフラインで目立った被害にはつながっていないが、グローバル展開に伴う文化的な副作用をもはや背景の雑音として扱えないことをデータが示している、とコ教授は主張した。
「Kコンテンツ、Kカルチャーへの熱狂だけを見ていてはいけない。海外の観客の少なくない割合がなぜ否定的な見方をしているのかを問わなければならない。それがKコンテンツの次の段階が答えるべき問いだ」
圧力は制作現場の内側からも来ている。PDジャーナルが1月に韓国PD連合会の会員2,842人を対象に行った調査では、放送局が対外的に掲げる「AI転換」を現場のプロデューサーは実感できていないことがわかった。AIのワークフロー、研修とガイドライン、制作用AIツールの利用料の予算がいずれも不十分だという。このギャップを埋めることが、そもそも世界の舞台で戦うための条件だとコ教授は述べた。
4. AI行動計画の第9項目:「世界が楽しむ私たちの文化」

国家人工知能戦略委員会「AI行動計画」(2026年)──「グローバルAI3大強国(G3)」を目指し、12項目のうち第9項目を「世界が楽しむ私たちの文化──AI基盤の文化強国」に充てている。(出典=国家人工知能戦略委員会)
李在明政権が今年確定した「国家AI行動計画」は、「真の成長」「全国民の普遍的な生活の質」「人類と国際社会への貢献」という3つのビジョンと、「グローバルAI3大強国(G3)」入りという目標を掲げている。12の課題のうち第9項目「世界が楽しむ私たちの文化──AI基盤の文化強国」は文化産業に充てられた。つまり文化は一般的な産業転換に組み込まれたのではなく、国家AI戦略の独立した柱として位置づけられている。
この柱を支えるのは、AI基盤の創作エコシステムの活性化、先導的なAI転換によるKコンテンツ産業の持続的成長、KコンテンツとK-AIの同時の海外展開と交流という3つの重点課題だ。コ教授は「韓国の政策だけでは持続可能にできない」とし、「ともに創り、ともに楽しみ、成果を分かち合える政策と企業戦略が必要だ」と語った。
5. Kチャンネル82が9月に開局──SBS、KBS、シンクレアが参加

Kチャンネル82──SBSとKBSがそれぞれ米国最大の地方放送ネットワーク、シンクレア・ブロードキャスト・グループと協定(MOUと戦略的協力協定)を結び、82チャンネルで韓国コンテンツの専門チャンネルを開局する。共同開発する専用モバイルアプリ「Kチャンネル82」で、視聴とEコマースを結びつける。(出典=聯合ニュース、ニュース1)
共進化モデルの最初の実地テストは、9月に米国で始まる。米国最大の地方放送ネットワーク、シンクレア・ブロードキャスト・グループのインフラを使った「Kチャンネル82」が、次世代放送規格ATSC 3.0でワシントンD.C.とボルティモアの市場で開局する。SBSは1月のCES 2026でシンクレアとMOUを結び、KBSも戦略的協力協定(SCA)を締結した。KBSとシンクレアはリニア配信にとどまらず、放送視聴とEコマースの収益をつなぐ「Kチャンネル82」のモバイルアプリを共同開発している。
SBSのパン・ムンシン社長は、Kチャンネル82を「世界的な競争力を持つSBSの映像コンテンツと、安定した米国の地上波放送網を組み合わせた」モデルだと説明した。単なるコンテンツチャンネルを超え、コ教授が「BAST(Broadcast Alliance with Sinclair and Telecommunications)」と呼ぶ枠組みの最初の成果でもある。韓国のコンテンツと韓国のAIを別々の事業として扱うのではなく、米国の放送インフラの上に重ねる構想だ。
「Kチャンネル82はKコンテンツだけでなくK-AIも組み合わせ、新しいコンテンツとサービスをともに開発していく」
6. 韓米エンターテック同盟:4つの具体案

コ・サムソク教授がCES 2026で示した韓米エンターテック同盟の4つの課題:韓流特化型AIモデル、多国籍バーチャルアイドルグループ、SphereやCOSMなど没入型会場でのK-POPコンサート、自動運転車向け没入型モビリティコンテンツの共同制作。(出典=コ・サムソク教授の基調講演)
コ教授の4つの課題は、昨年シンガポールのAICONで初めて提案され、CES 2026期間中にシーザーズ・パレスで開かれた「ネクストKウェーブ・エンターテック・フォーラム」(シンクレアの技術担当社長デル・パークス氏、K-EnterTech Hubのハン・ジョンフン代表と登壇)、2月のマレーシア投資貿易産業副大臣との会談、4月のNABショー2026へと引き継がれてきた。それらは「韓米エンターテック同盟」という一つの枠組みに収れんする。
第一に、韓国、米国、東南アジアのコンテンツ企業とAI企業が韓流特化型AIモデルを共同開発する。第二に、多国籍のバーチャルアイドルグループを結成し、オンラインとオフラインの舞台に立たせる。2025年にソウルで開かれたPLAVEのアジアツアー「Quantum Leap」がその形式を示した。第三に、ラスベガスのSphereやロサンゼルスのCOSMといった没入型会場で、共同制作のグローバルK-POPコンサートを開く。第四に、韓米が共同開発するモビリティ・エンターテインメントサービスで、自動運転車を没入型コンテンツ体験の次の舞台にする。
「端的に言えば、米国、シンガポール、そのほかの東南アジア諸国とエンターテインメント・テクノロジー同盟を結ぼう」
7. エンターテック都市:CES、SXSW、BIFF、エディンバラ
コ教授は次の段階の地理で講演を締めくくった。エンターテインメント、技術、都市のプラットフォームを一つの発展エンジンとして組み合わせる都市こそが、次の10年に向けて地歩を固めている。CESのラスベガス、SXSWのオースティン、BIFFの釜山、フェスティバルのエディンバラがそうだ。韓国では、ソウル、仁川、釜山、そして韓国のシリコンバレーとも呼ばれる城南テクノバレーが最も有力な候補だという。
講演は最後のスライドの一文で締めくくられた。「AIと文化が動かす国(A Nation Powered by AI & Culture)」
「これはどの国も単独ではできない。Kカルチャーの次の時代は、各国の専門家との交流と協力によって築かなければならない」

■ ひと目でわかる──コ教授の基調講演の7つのデータ
① EGOT達成 2025年の『もしかしたらハッピーエンディング』のトニー賞受賞で、韓国はエミー、グラミー、アカデミー、トニーの4賞をそろえた。
② 157兆ウォン/141億8,000万ドル 2025年のコンテンツ産業売上高157兆4,000億ウォン、輸出141億8,000万ドル。2014〜2023年の輸出の年平均成長率(ドル建て)は10.2%。
③ SVOD現地作品で世界1位 Luminate:2024年に米国系主要SVODの現地オリジナル作品数で韓国が約60作品で世界1位。
④ 否定的な見方 30.7%→37.5% 韓流への否定的な見方への同意が5年連続で上昇、東南アジアで#SEAblingボイコットが表面化。
⑤ AI行動計画 第9項目 李政権の「グローバルAI3大強国(G3)」の課題で、文化を「AI基盤の文化強国」という独立した柱に。
⑥ 9月にKチャンネル82 SBSのMOU、KBSのSCAでシンクレアと提携。ワシントンD.C.・ボルティモアでATSC 3.0により開局、共同開発のモバイルアプリで放送とEコマースをつなぐ。
⑦ 韓米エンターテック同盟 4つの課題:韓流特化型AIモデル、多国籍バーチャルアイドルグループ、Sphere・COSMでのK-POP、自動運転車の没入型コンテンツ。