要約
米フォックス傘下の広告付き無料ストリーミング(FAST)「Tubi」が、TikTokクリエイター12人による初の長尺シリーズ10本に制作費を出す。ルミネイトの10月の報告書では、米国の18~24歳の57%がショート動画で映画やドラマを見つけると回答し、ストリーミングアプリ内での探索(55%)を上回った。作品を「見つける場所」と「見る場所」が分かれる中、広告型の無料サービスがショート動画の発見力を長尺視聴へとつなげる制作モデルを試し始めた。
米フォックス(Fox)傘下の無料ストリーミングサービス「Tubi(チュービ)」が、TikTokのクリエイター12人にオリジナル長尺シリーズ10本の制作費を提供する。FAST(Free Ad-supported Streaming TV)は、広告を挿入する代わりに視聴料を取らないストリーミングを指す。米バラエティ(Variety)が27日(現地時間)に独占で報じた「クリエイターバース・インキュベーター(Creatorverse Incubator)」の第1期だ。作品はTubiで独占配信され、ジャンルはアニメ、ホラー、リアリティー、ヤングアダルト(YA、主に10代向け)にまたがる。
Tubiがショート動画のクリエイターに長尺作品を任せる背景には、視聴者が作品を見つける経路の変化がある。米調査会社ルミネイト・インテリジェンス(Luminate Intelligence)が10月に発表した特別報告書「ソーシャルメディアとエンターテインメントの発見(Social Media & Entertainment Discovery)」によると、米国の18~24歳の57%がショート動画で新しい映画やドラマを見つけると答えた。ストリーミングサービス内で探すという回答(55%)より高い。ショート動画が発見経路の首位に立ったのは、全年代のうち18~24歳だけだ。
Tubiの業績も同じ時期に伸びた。フォックスが8月に発表した2026会計年度(2025年7月~2026年6月)第4四半期決算では、Tubiの売上高が35%、総視聴時間が17%増え、月間利用者数は1億1000万人に達した。2025年6月に「Tubi for Creators」を始めて以降、700人を超えるクリエイターから3万5000本以上のエピソードを確保している。フォックスは6月にロク(Roku)を220億ドルで買収すると発表し、テレビOSと無料チャンネルの流通までを1社に束ねる手続きを進めている。
変わっていない面もある。米国の視聴者全体では、映画をショート動画で見つける割合は33%にとどまり、口コミ(49%)、テレビ広告(44%)、ストリーミングのジャンル検索(43%)を下回る。55歳以上では25%以下に下がる。TubiとTikTokはこの世代差を役割分担で埋めた。TikTokはクリエイターを選び、マーケティングツール「TikTok Spotlight」でファンの関心をTubiのシリーズへ誘導する。Tubiは制作費と独占配信の窓口を担う。
クリエイター12人・10シリーズ アニメとリアリティーが各3本
10本の内訳はホラー2本、アニメ3本、リアリティー・トーク3本、コメディー2本だ。恋愛リアリティー「カイ・ピックス・ザ・ガイ(Kai Picks the Guy)」は、女性出演者とデートするつもりで来た男性3人が、司会のカイ・キャメロン(Kai Cameron)との1対1の「デート」で品定めされる形式だ。
「ア・グレート・オーストラリアン・ゲイ・サイドクエスト(A Great Australian Gay Sidequest)」は、マーク・セバスチャン(Marc Sebastian)がオーストラリアの個性的な観光地を巡る旅番組である。
パブロ・ヘルナンデス(Pablo Hernandez)とアレックス・メイストリック(Alex Maystrik)のコンビは、ヤスミン・サヒド(Yasmine Sahid)とともにコメディー「ネバー・ハブ・アイ・スペント・ザ・ウィンター・ウィズ・ザ・ロマーノ・ブラザーズ(Never Have I Spent the Winter with the Romano Brothers)」を手がける。10シリーズに12人が参加するのはこのためだ。制作費と配信開始日は明らかにしていない。

| 作品 | クリエイター | ジャンル |
|---|---|---|
| Would You Survive? | クリストファー・キーリー(Christopher Kiely) | ホラー |
| Scare Tours | アリー・トラン(Allie Tran) | ホラー |
| Feeling Super | リネル・ジョーンズ・ジュニア(Lynnell Jones Jr.) | アニメ |
| The Roach Chronicles | ケンドリア・ブランド(Kendria Bland) | アニメ |
| Jamie Crow | セバスチャン・クラール(Sebastian Krahl) | 大人向けアニメ |
| Kai Picks the Guy | カイ・キャメロン(Kai Cameron) | 恋愛リアリティー |
| A Great Australian Gay Sidequest | マーク・セバスチャン(Marc Sebastian) | 旅リアリティー |
| Asking for a Friend | サブリナ・ブライアー(Sabrina Brier) | セレブトーク |
| The Leasing Manager | マディソン・ハンフリー(Madison Humphrey)主演 | 職場コメディー |
| Never Have I Spent the Winter with the Romano Brothers | ヤスミン・サヒド(Yasmine Sahid)、パブロ・ヘルナンデス&アレックス・メイストリック | コメディー |
Tubi×TikTok「クリエイターバース・インキュベーター」第1期のシリーズ。出所=The Desk、Variety

Tubiでクリエイター・パートナーシップ担当副社長を務めるクジ・チクンブ(Kudzi Chikumbu)氏はバラエティに対し、「私たちが組むクリエイターは、フォロワーと独自の視点、そして人々が繰り返し見に来る作品群をすでに築いている」と述べ、「インキュベーターは、彼らが始めたことを育てられるよう創作の自由を与えるパートナーの役割だ」と語った。
同氏は、クリエイターたちが「ほかでは作れなかったかもしれない意欲的な作品」で初のテレビ番組に挑むと付け加えた。TikTokでエンターテインメント・マイクロシリーズのグローバル責任者を務めるドーン・ヤン(Dawn Yang)氏は「TikTokのコミュニティーは、人々がクリエイター主導の物語にどれほど強く引きつけられるかを示している」とし、「今回の提携は、新たな観客に作品を届けるもう一つの道になる」と述べた。
発表から7カ月で第1期 TikTok出身の副社長が率いるクリエイター事業
TubiとTikTokは3月19日にインキュベーターを初めて発表した際、第1期を「今夏」に公表するとしていた。事業は2025年4月に加わったリッチ・ブルーム(Rich Bloom)クリエイタープログラム責任者兼事業開発担当上級副社長と、チクンブ副社長が率いる。
チクンブ氏はTikTokとその前身であるミュージカリー(Musical.ly)で8年間働き、グローバルのクリエイターマーケティングを統括した後、2025年8月にTubiに入社した。
同氏の入社当時、Tubiのクリエイターコンテンツは、ミスタービースト(MrBeast)やアランズ・ユニバース(Alan's Universe)など5000本余りだった。
14カ月後、その規模は3万5000本以上と7倍に膨らんだ。Tubiはクリエイター作品だけを集めた「クリエイターバース・ハブ」をアプリ内に新設し、6月からはアマゾンのFire TVでもクリエイター番組の配信を始めた。Tubi全体のライブラリーは映画・テレビのエピソード37万5000本、自社オリジナルは400本近い。ライセンスで積み上げたクリエイターライブラリーの上に、自ら制作費を出すオリジナルを重ねたのが今回のインキュベーターだ。

米クリエイター広告費、今年439億ドル メディア全体の4倍の速さで成長
クリエイターコンテンツが広告市場に占める比重も高まっている。米国の広告主がクリエイターコンテンツに投じた金額は2025年に371億ドルと26%増えた。米インタラクティブ広告協会(IAB)は、今年は18%増の439億ドルに達し、メディア産業全体の4倍のペースで伸びると予測する。増加分の多くは、クリエイターと直接契約したコンテンツをソーシャルメディア上で有料で拡散する費用に充てられる。IABはこの項目が今年48%増の132億ドルになるとみており、クリエイター広告を「中核メディアチャネル」に位置づけた。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、クリエイターエコノミーの規模が2023年の約2500億ドルから2027年には4800億ドルに拡大すると予測している。成長をけん引するのはブランドマーケティングと、ショート動画プラットフォームによる広告収益の分配だ。ただし年10万ドル以上を稼ぐ「プロ」のクリエイターは全体の約4%にすぎない。Tubiのインキュベーターは、その中でもすでにファン層を持つ少数に長尺作品の制作費を出す仕組みだ。

18~24歳の週間メディア時間の26%がショート動画 55歳以上は12%
ショート動画は若年層の基本的な視聴形態になった。ルミネイトの米消費者調査「エンターテインメント365(Entertainment 365)」第17回(2026年5月5~26日、2000人)と「ミュージック360(Music 360)」2026年1~6月期(8105人)を分析すると、18~24歳は1週間にテレビ番組・シリーズに9時間、映画に6時間、音楽に11時間、ショート動画に9時間を費やしている。65歳以上はテレビ19時間、ショート動画5時間だ。4つの活動に限れば、ショート動画は18~24歳の週間メディア時間の26%、55歳以上では12%を占める。

若年層が最初に作品と出会う形式もショート動画だ。ルミネイトによると、直近3カ月にショート動画を見た18~24歳は59%で、映画を見た割合(49%)を上回った。65歳以上はテレビシリーズ73%、映画57%、ショート動画49%の順だった。
自身をショート動画の「熱烈なファン(die-hard)」と答えた割合は、18~24歳で38%とテレビシリーズ(36%)並みで、65歳以上は14%だった。報告書は「長尺のプレミアムコンテンツには今後も観客がいるが、ショート動画と同等の比重を分け合うことになる可能性が高い」と指摘した。

ショート動画での発見が57%で首位 ストリーミング内探索を上回るのは18~24歳のみ
映画・ドラマの発見経路を年代別に見ると、18~24歳はショート動画57%、ストリーミングサービス内の探索55%(おすすめ・ジャンル・人気作探索の平均)、口コミ53%、従来型ソーシャルメディア52%の順だ。この世代はショート動画とソーシャルメディアのいずれも半数超が発見経路として使っている。ショート動画の割合は25~34歳で37%に下がり、45~54歳は22%、65歳以上は16%となる。逆に口コミは年齢とともに上がり、65歳以上では58%に達する。

ショート動画とストリーミングでは、作品との出会い方がまったく異なる。ストリーミングサービスはポスター画像を横一列に並べる「カルーセル(carousel)」で作品を見せるが、ショート動画ではアルゴリズムが選ぶフィードをスワイプするうちに、映画やドラマから切り出したクリップやファンが作った動画に出会う。
視聴者全体でも約3分の1がショート動画(映画33%、ドラマ30%)やソーシャルメディア(同35%、32%)で作品を見つけている。報告書はこの数値がストリーミング内の探索と「わずかな差」だと指摘した。
映画館の常連客の42%がショート動画で映画を発見 一般の観客より9ポイント高く
お金を使う観客ほど、ショート動画で新作を見つける割合が高い。直近3カ月に映画館で3本以上を見た「常連客」の42%が、ショート動画で映画を見つけている。映画視聴者全体(33%)より9ポイント高く、ストリーミングのジャンル検索(44%)に迫る。ほかの経路では両者の差は1~6ポイントにとどまる。18~24歳の常連客では、ソーシャルメディア67%、ショート動画62%がこれらの経路で映画を見つけた。25~44歳はショート動画をより多く使い、45~54歳では従来型ソーシャルメディア(35%)がショート動画(22%)を上回った。

音楽の発見も同じ流れ ライブ観客の60%がショート動画で新曲を見つける
音楽でもショート動画はすでに主要な消費の窓口だ。18~24歳の音楽リスナーの58%がTikTokのようなアプリで短い音楽クリップを見ているのに対し、65歳以上は19%だ。米国のリスナー全体の音楽発見経路は、ストリーミング40%、ラジオ39%、知人38%、従来型ソーシャルメディア37%、ショート動画33%と僅差で並ぶ。18~24歳ではショート動画(53%)がストリーミング(55%)に肉薄している。
財布のひもが緩いファンほど、ソーシャルで発見する割合が高い。年4回以上ライブに行く観客の65%がソーシャルメディアで、60%がショート動画で新しい音楽を見つけた。リスナー平均よりそれぞれ28ポイント、27ポイント高く、ソーシャルメディアはストリーミング(63%)をも上回った。
発見はプラットフォーム外での消費にもつながる。ソーシャルで音楽を見つけたリスナーの58%は、そのアーティストの別の曲を探して聴いた。ソーシャル上で音楽関連の行動を4種類以上するユーザーでは69%に上る。18~24歳のソーシャル利用者の39%は、見つけた音楽をSpotifyなどのストリーミングで改めて検索している。

Tubiがクリエイターに長尺作品を任せる論理も、この流れの上にある。ショート動画で生まれた関心が別のプラットフォームでの長い視聴に移るなら、すでにファンを持つクリエイターの初の長尺作品は、発見コストを抑えたオリジナルになる。ルミネイトは報告書の有料拡張版で「ソーシャルメディアで映画やドラマを見つけた消費者の大半が本編視聴に至った」としている。
ストリーミング7社が縦型フィードを導入 Tubi「Scenes」は2024年11月に先陣
ストリーミング各社も、ショート動画の発見の仕組みをアプリ内に取り込んだ。ルミネイトによると、この1年で米国の主要ストリーミングサービスの大半がモバイルアプリにTikTok型の縦型動画フィードを導入した。クリップをスワイプしながら、そのまま本編を再生したり、ウォッチリストに追加したり、メッセージで共有したりできる構造は共通している。ディズニー(Disney)は8月にTikTokと提携し、クリエイターがマーベル、ピクサー、スター・ウォーズのキャラクターを使った動画を、TikTokとディズニープラスの縦型フィード「Verts」の両方に投稿できるようにした。
| サービス | フィード名 | 導入 | 内容 |
|---|---|---|---|
| Tubi | Scenes | 2024年11月 | 映画・ドラマのクリップ |
| ディズニープラス | Verts | 2026年3月 | ライブラリーの名場面、クリエイターコンテンツを検討 |
| ネットフリックス | Clips | 2026年4月 | シリーズ・映画・スペシャルのクリップ、ポッドキャスト・ライブへ拡大予定 |
| パラマウントプラス | (名称なし) | 2026年4月 | スポーツハイライト・CBSニュース・UFC、クリエイター・ショートドラマを検討 |
| プライム・ビデオ | Clips | 2026年5月 | NBAハイライト、映画・ドラマのクリップ |
| HBO Max | HBO Max Shorts | 2026年7月 | 予告編・クリップ・特典映像 |
| ピーコック(Peacock) | Vertical Feed | 2026年8月 | ライブラリークリップ、ショートドラマハブ「Your Bravoverse」 |
米ストリーミングサービスのモバイルアプリにおける縦型動画フィード。出所=ルミネイト・インテリジェンス(2026年9月)
Tubiはこの中で最も早く縦型フィードを始めた。他社がショート動画のクリップをアプリ内に引き込んで発見を促す方向だとすれば、今回のインキュベーターは、ショート動画ですでに観客を集めた作り手を招いて長尺作品を作る逆方向の試みだ。
Tubi第4四半期売上高35%増 米テレビ視聴シェアは過去最高の2.3%
フォックスの2026会計年度の売上高は5%増の171億3000万ドルだった。第4四半期の広告収入は、ワールドカップ中継とTubiの成長により78%急増した。ラクラン・マードック(Lachlan Murdoch)最高経営責任者(CEO)は、Tubiのワールドカップ関連収入は意味があるものの、Tubi全体の増収に比べれば小さいと説明した。フォックスの証券登録届出書によると、Tubiの年間売上高は25%超増え、年間総視聴時間は約132億時間と20%増加した。

米ニールセン(Nielsen)の「ザ・ゲージ(The Gauge)」で、Tubiの米テレビ視聴シェアは2025年10~12月の2.0~2.1%から2026年4月に過去最高の2.3%へ上昇した。広告付き視聴だけを集計する「広告付きゲージ」では、2025年第4四半期の広告型ストリーミング視聴の6.2%をTubiが占めた。フォックスは2020年にTubiを4億4000万ドルで買収している。

Tubiが米調査会社ハリス・ポール(Harris Poll)と実施した「ザ・ストリーム2026(The Stream 2026)」調査では、回答者の67%がデジタルクリエイターのコンテンツは既存のテレビや映画より独創的に感じると答えた。独立系・小規模の作り手による番組をもっと見たいという回答は76%、Z世代でリメイクやフランチャイズよりオリジナルを望む回答は78%だった。Tubiはこの調査をインキュベーター発表と同じ週に公表した。
ネットフリックスはライセンス、YouTubeは独占報酬 クリエイター争奪戦
クリエイターの争奪戦は今年、テレビ画面へと舞台を移した。
ネットフリックス(Netflix)は、Spotifyやアイハートメディア(iHeartMedia)のビデオポッドキャストやYouTuberの作品を買い付けている。ブルームバーグは8月19日、YouTubeが一部の人気クリエイターに対し、ネットフリックスで同時配信しないことを条件に数百万ドルと制作費、ブランドキャンペーン収益の分配を提示したうえ、ネットフリックスと契約したクリエイターはマーケティングイベントなどから外される可能性があると警告したと報じた。YouTubeはここ数年でクリエイターに500億ドル以上を支払っている。
Tubiもこの市場に参入していた。2025年10月には、犯罪ポッドキャスト「クライム・ジャンキー(Crime Junkie)」を手がけるアシュリー・フラワーズ(Ashley Flowers)氏のオーディオチャック(Audiochuck)の作品を獲得し、業界はこの複数年契約を約1億5000万ドルと推定している。

今回のインキュベーターはアプローチが異なる。YouTubeですでに長尺動画を作っているクリエイターを買い取るのではなく、TikTokの短い動画で観客を集めた作り手に初のテレビシリーズを任せる。YouTubeが独占報酬を提示した長尺系YouTuberとは別の供給源だ。
YouTubeのコンテンツはすでにテレビ画面を席巻している。YouTubeの米テレビ視聴シェアは8月に過去最高の15.8%を記録し、3位ネットフリックス(7.7%)の2倍を超えた。2024年9月の10.6%から2年で5.2ポイント上昇し、8月には50歳以上のYouTube視聴が9%増えた。YouTubeは2021~2025年にクリエイター、レコード会社、メディア企業へ1000億ドル以上を支払ったが、同期間のネットフリックスのコンテンツ支出は795億ドルだった。
米調査会社モフェットネイサンソン(MoffettNathanson)は、YouTubeの2025年の売上高を約620億ドルと推計し、ディズニーのメディア部門(609億ドル)を上回ったと分析した。YouTubeは2025年9月、テレビ画面経由で年10万ドル以上を稼ぐチャンネル数が前年比45%増えたと明らかにした。


| プラットフォーム | 確保の手法 | 規模 | 事例 |
|---|---|---|---|
| YouTube | 収益分配・独占報酬 | 2021~2025年の支払い1000億ドル超 | ネットフリックス同時配信見送りを条件に報酬提示(8月) |
| ネットフリックス | ライセンス・独占配信 | 5年間のコンテンツ支出795億ドル | Spotify・iHeartのビデオポッドキャスト |
| Tubi | ライセンス → 制作費投資 | クリエイター700人・3万5000本 | TikTokインキュベーター10本、Audiochuck(推定1億5000万ドル) |
| TikTok | ショート動画の収益分配・マイクロシリーズ | PineDramaアプリ(1月) | HOORAEと提携、長尺はTubiと協業 |
| Samsung TV Plus | FASTチャンネル編成 | 月間利用者1億人 | Smoshなどのクリエイターチャンネル |
プラットフォーム別のクリエイター確保策。出所=各社、ブルームバーグ、Variety、The Desk
TikTokは1分ドラマ、Tubiは長尺 米合弁会社発足後にエンタメを拡大
中国系の親会社を持つTikTokの米国事業は紆余曲折を経て、1月22日に「TikTok USDS合弁会社(TikTok USDS Joint Venture)」へ移管された。米国・グローバル投資家が80.1%、バイトダンス(ByteDance)が19.9%を保有し、オラクル(Oracle)、シルバーレイク(Silver Lake)、MGXがそれぞれ15%を持つ。
TikTokは同月、米国とブラジルで1話1分前後の縦型ドラマアプリ「PineDrama(パインドラマ)」を投入し、6月にはイッサ・レイ(Issa Rae)氏の制作会社HOORAEとマイクロシリーズで提携した。ヤン氏の肩書に「マイクロシリーズ」が入っているのもそのためだ。1分の縦型ドラマはTikTokが自ら育て、長尺はTubiに任せる構図である。
ロクを220億ドルで買収 制作・無料チャンネル・広告を1社に
フォックスは6月15日、ロクを1株160ドル(現金96ドル+フォックスA株0.9693株)で買収することで合意した。ロクは世界1億のストリーミング世帯と直接の関係を持ち、無料チャンネルプラットフォーム「ザ・ロク・チャンネル(The Roku Channel)」を運営する。フォックスは、統合後に視聴シェアで米国3位のテレビプラットフォームになり、年4億ドルのコスト削減効果が見込めるとしている。発表当日の午前、フォックスの株価は15%下落した。取引は株主と規制当局の承認を経て、2027年上半期に完了する予定だ。完了すれば、クリエイターオリジナルを制作するTubiと、無料チャンネルを流通させるロクのホーム画面が同じ会社の中に収まる。

韓国ショーボックス、ReelShortとショートドラマを共同制作 世界市場は160億ドル
韓国の制作会社も縦型動画市場に乗り出している。映画「破墓/パミョ」を配給したショーボックス(Showbox)は6月15日、月間利用者7000万人のショートドラマプラットフォームReelShort(リールショート)と共同制作契約を結んだ。まずReelShortが保有するIPで制作し、その後ショーボックスのオリジナルへ広げる。作品はReelShortで6カ月間、全世界で独占配信される。ショーボックスは2025年12月に「ブライダルシャワー:消えた花嫁」など2本でショートドラマに参入し、DramaBox、Viglooとも配給契約を結んだ。ショート形式のKドラマ「イン・ザ・ネーム・オブ・ビューティー(In The Name Of Beauty)」はTikTokで再生回数3億回を突破した。
メディア・パートナーズ・アジア(MPA)は、世界のショートドラマ収益が2024年の93億ドルから2026年に160億ドルへ拡大し、2030年には260億ドルに達するとみる。デロイト(Deloitte)は、アプリ内課金の売上高が2025年の38億ドルから2026年に78億ドルへ増えると予測した。韓国国内市場については、カカオベンチャーズが2024年に約6500億ウォンと推計している。

Samsung TV Plusの月間利用者1億人 クリエイターチャンネルもFASTへ
韓国企業が運営するFASTも、YouTubeクリエイターとの協業を広げている。サムスン電子のSamsung TV Plusは1月に月間利用者数1億人を突破した。CES 2026のサムスン・テックフォーラムに登壇したスモッシュ(Smosh)のアレッサンドラ・カタネーゼ(Alessandra Catanese)CEOは、FASTチャンネルへの進出後、スモッシュは「YouTuberというより、プレミアムなコメディーブランドでありメディア制作会社として認識されている」と語った。Samsung TV Plusは1月、韓国のFASTプラットフォームとして初めて地上波の24時間ニュースチャンネルを編成した。YouTubeで成長したクリエイターブランドがテレビメーカーの無料チャンネルへ移る経路を、韓国企業はすでに持っているわけだ。
韓国の個人クリエイター3万4806人・収入2兆4714億ウォン 上位1%が18%を占有
韓国国税庁が国民の力のパク・ソンフン議員に提出した資料によると、2024年分の収入を申告した個人メディアクリエイターは3万4806人、総収入は2兆4714億ウォン(約18億4800万ドル)だった。2020年(9449人)の3.7倍に増え、1人当たり平均収入は5651万ウォンから約7100万ウォン(約5万3100ドル)へ25.6%上昇した。上位1%(348人)は1人平均12億9339万ウォン、合計4501億ウォンで、全体の18.2%を占めた。上位10%(3480人)の取り分は46.9%、下位50%(1万7404人)は17.3%だ。個人メディア業種の法人も、2025年の法人税申告ベースで2024社、収益1兆1134億ウォン(約8億3200万ドル)に上った。
収入が上位層に集中する構造は、ゴールドマン・サックスが分析した世界市場(プロのクリエイターは約4%)と似ている。年に数億ウォンを稼ぐ韓国の上位クリエイター数千人は、Tubi・TikTokモデルが求める「すでにファンを持つ作り手」に当たる。放送局や制作会社が彼らと長尺作品を共同開発するなら、収益配分だけでなく、IPの所有権と独占期間をどう分けるかが契約の核心になる。Tubiは制作費を出して独占配信の窓口を得て、ショーボックスはReelShortに6カ月の独占権を与えた。

Tubi副社長が11月5日にソウルで基調講演 ショート動画での発見を長尺視聴へつなぐ課題
Tubiのクリエイター戦略は来週、ソウルでも紹介される。韓国の放送メディア通信委員会が主催し、韓国放送広告振興公社(KOBACO)が運営する「2026国際OTTフォーラム」が11月5日、光化門のフォーシーズンズホテルで開かれ、Tubiのデビッド・サーモン(David Salmon)副社長が、ファンダムや嗜好に基づくキュレーションとクリエイター協業をテーマに基調講演を行う。同じ場には、YouTubeのウェブバラエティー「ピンゲゴ」のチョ・ウンジン監督、tvN「ポンポン地球娯楽室」のパク・ヒョンヨンPD、MBCのキム・ジンマン制作本部長、BBC iPlayer責任者のケレンサ・サマニディス(Kerensa Sammanidis)氏も登壇する。
韓国企業へのメッセージ クリップは全編へ、クリエイターとは共同開発で
ルミネイトの調査は、韓国の放送・メディア事業者が米国の若い視聴者に作品を届ける最初の入り口がショート動画であることを数字で示している。18~24歳の57%がショート動画で作品を見つけ、映画館やライブに頻繁に足を運ぶ観客ほどその割合は高い。韓国の放送局もすでにYouTubeにクリップやウェブバラエティーを上げているが、米ストリーミング各社が縦型フィードに付けたのは、クリップから本編へ直接移れる「視聴ボタン」だ。クリップがどのサービスの本編につながるかまで設計して初めて、発見が実際の視聴に結びつく。
放送局はクリップを投稿する際、つなげる全編の配信先も合わせて決める必要がある。米ストリーミング7社は縦型フィードに「全編を見る」ボタンを付け、ルミネイトはSNSで作品を見つけた消費者の大半が全編視聴に進んだとしている。海外の視聴者にとっては、Samsung TV PlusやLGチャンネル(LG Channels)など韓国メーカーのFAST、あるいはTubiやザ・ロク・チャンネルがその受け皿になり得る。ショート動画が再生数で終わらず、広告の付く長尺視聴につながって初めて放送局の売上になる。
制作会社は、クリエイターを出演者ではなく共同開発者として迎える契約を準備する時期だ。Tubi・TikTokモデルは、ショート動画プラットフォームが作り手の選抜と宣伝を、長尺サービスが制作費と独占配信の窓口を担う分業だ。ショーボックス(쇼박스)がReelShortに6カ月の独占を与えて制作に入ったように、韓国の放送局・制作会社が韓国のクリエイターと共同開発した長尺作品を米国の無料チャンネルに出す道も開かれている。その際は収益配分に加え、IPの帰属、独占期間、続編の権利を先に契約書に盛り込むべきだ。
クリエイターとMCNは、ショート動画のフォロワーを長尺視聴へ移した実績を交渉材料として積み上げる必要がある。韓国の個人クリエイター上位10%(3480人)が全収入の46.9%を得る構造では、海外の長尺案件を受けられるのはすでにファンを持つ作り手だ。Tubiが選んだ12人も、TikTokで「人々が繰り返し見に来る作品群」を持つクリエイターだった。英語・スペイン語の字幕や吹き替えを付けたショート動画で、米国18~24歳のフィードにまず入ることが出発点になる。
テレビメーカーとプラットフォームは、チャンネル編成から制作投資へ一歩進むことができる。フォックスはTubiでオリジナルを作り、ロク買収でテレビOSとホーム画面を束ねる。月間利用者1億人のSamsung TV PlusとLGチャンネルは、すでにOSと無料チャンネルを併せ持つ事業者だ。クリエイターのオリジナルに制作費を出して独占配信の窓口を得るTubi型モデルは、韓国メーカーが真っ先に試せる仕組みだ。Tubiは「月間アクティブユーザー」の定義を公表しておらず、他サービスと同じ基準で比べにくい。海外の無料プラットフォームと契約する際は、視聴データの提供範囲をまず確認する必要がある。
韓国政府がすべきこと ショート動画と長尺の壁をなくし、K-FASTを共同開発へ
政府支援はFASTの流通面で成果を上げている。韓国科学技術情報通信省(과학기술정보통신부)は2025年の補正予算80億ウォン(約9.4億円)でAI吹き替えのK-FASTチャンネル20本を構築し、Samsung TV PlusとLGチャンネルを通じて22カ国に配信した。サービス開始から5カ月後の2026年4月末に累計視聴者約1億人に達した。今年はチャンネル当たり2億3000万ウォン(約2700万円)を投じ、縦型ドラマ、Kビューティー、Kダンスなど4チャンネルを加える。縦型ドラマのチャンネルは、9対16の縦型映像をテレビ画面に合わせる「デュアルビュー」方式で編成する。グローバルK-FASTアライアンスの参加企業は発足時の22社から82社に増えた。
一方、クリエイター支援制度にはTubiモデルと食い違う部分がある。同省が2025年に公告したクリエイターのコンテンツ制作支援は、1分未満のショート動画を対象から外し、放送事業者とIPTV事業者の参加を認めなかった。今年は放送メディア通信委員会(방송미디어통신위원회)がクリエイターメディア産業に85億ウォン(約10億円)を割り当て、1件当たり最大6000万ウォンを支援する。ショート動画で見つけた作り手を放送局や制作会社の長尺制作と組み合わせるコンソーシアムは、こうした区分の中では支援を受けにくい。
政府がまず手を付けられるのは、ショート動画での発見と長尺制作をつなぐ共同開発の枠組みだ。クリエイター、放送局、制作会社が一つのコンソーシアムとして支援を受けられるようにし、K-FAST事業をチャンネル構築や吹き替え支援から、海外のFASTプラットフォームと韓国クリエイターのオリジナルを共同開発するインキュベーター型の事業へ広げることができる。TubiとTikTokが分け合った役割を、韓国ではショート動画プラットフォーム、FAST事業者、制作会社が分担する構図だ。
契約とデータの基準も要る。海外プラットフォームとの独占期間、IPの帰属、視聴データの提供範囲を盛り込んだ標準契約ガイドがあれば、個々のクリエイターや中小制作会社の交渉力が高まる。クリエイター産業の統計も、国税庁の所得データに加え、プラットフォーム別の海外売上や視聴データを組み合わせた実態調査で補う必要がある。支援事業が科学技術情報通信省、放送メディア通信委員会、文化体育観光部(문화체육관광부)に分かれている以上、ショート動画クリエイターの海外長尺進出を一つの窓口で支援する省庁間の協力体制も検討に値する。
予算・配信日は非公表 ショート動画のファンが長尺の視聴者になるかが焦点
Tubiはインキュベーター作品の制作費と配信時期を明らかにしていない。第1弾のシリーズが配信されたら、まず確認すべき指標はTikTokのフォロワーがTubiでエピソードを最後まで見るかどうかだ。ルミネイトの調査ではショート動画での発見は18~24歳に集中し、55歳以上では25%以下にとどまるため、クリエイターシリーズの視聴者層も若年層に偏る可能性が高い。
2027年上半期にロクの買収が完了すれば、フォックスはクリエイターオリジナルの制作(Tubi)、無料チャンネルの流通(ザ・ロク・チャンネル)、テレビOSと広告販売を1社の中で運営することになる。ネットフリックスがライセンスで、YouTubeが独占報酬でクリエイターをつなぎ留める中、フォックスはショート動画で実績を示した作り手を長尺の制作者に育てる道を選んだ。Tubi第1期の成績は、ショート動画の発見力が広告型の長尺視聴にどこまで移るかを測る最初の試金石となりそうだ。